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すれ違う恋の行方〈大学編〉  作者: 秋 夕紀
第7章 秋庭二奈(19歳)=立松千宙(19歳)
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§2ストーカーの被害

 二奈は6月に入ってから、千宙が心に秘めていた彼女と再会したと聞いた。学食で一緒に食事をしている時に、千宙が打ち明けた。

「向こうから連絡して来たんだ?それで、どうだった?彼女は。」

「うん、雰囲気が変わっていてびっくりした。」という彼に、

「そうじゃなくて、彼氏がいるのかどうか、付き合うのかどうかという事だよ。」と()き返した。彼はうれしそうに、彼女とやり直す事になったと言った。


 二奈は夏休みになっても長崎には帰らず、バイトに精を出していた。ある日、カフェの客で30歳ぐらいの男が、彼女のネームプレートを見て、

「秋庭さんというの?いつも働いてるけど、高校生?」と話し掛けてきた。

「いえ、大学生です。いつもありがとうございます。」と私は差し(さわ)りのない返事をしてやり過ごした。それから数日後、

「君、可愛いね!アドレスを交換しようよ。」と言ってきた。私はその時、丁重にお断りをしたつもりでいたが、何度も店を訪れては私の事をじっと見ていた。


 二奈は気味悪くなって店長に相談したが取り合ってくれず、千宙に話そうかと思ったが、夏休み中で会う機会がなかった。仕事終わりに待ち伏せされた事があり、特に遅番の時には注意していたが、帰り道で出くわした。

「秋庭さん、今帰りなの?女の子が夜遅くに危ないから、送って行こうか?」と声掛けされ、「危ないのはあんただよ」と言ってやりたかった。

「いえ結構です、大丈夫ですから。」と言っても付いて来た。私は家を知られたくない思いから、遠回りをして人のいそうなファミレスに入った。その人は案に違わず付いて来たので、すきを見計らって逃げ出そうと思っていた。

「どうして付きまとうんですか?ストーカーですよね!警察に訴えますよ!」

「そんなに怒らないでよ!秋庭さんを好きだから、一度話したかったんだよ。」

 私は一瞬の好機を逃すまいと、その男の話を聞き流していた。


 その男は自慢話や好きな女の子のタイプを話していたが、二奈の耳には入って来なかった。どうやらロリコンであるらしいという事は分かり、逃げ出す算段をしていた。男が我慢できずにトイレに立ったすきを捕らえ、急いで店を出て走り去った。二奈は店長に再び事情を話し、しばらくは遅番がないように頼んだ。

 9月になって大学が始まり、早速(さっそく)千宙に夏休みの出来事を相談した。千宙は警察に行く事を進め、一人では心細い二奈に付き添った。

「そいつはストーカーだよね。夜遅くなる時は、なるべく一緒に帰ろう!」

「そうしてくれると助かるわ!家まで来られたら、どうなるかと思って。」

 私は彼からの申し出がありがたく、何よりも嬉しかった。私たちはバイトのシフトを調整し、彼がアパートまで見送ってくれた。私のアパートは駅に近く、部屋に入るのを見届けてから帰路に着くのだが、そのまま帰すのは申し訳なく、1カ月が経ったある日、彼を部屋に上がっていくように勧めた。彼は、「送り狼になると困るから」とあっさりと断った。私は、彼が狼なら構わないと思っていた。


 その後、その男からの接触はなく、二奈はあきらめたものと思って油断していた。


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