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すれ違う恋の行方〈大学編〉  作者: 秋 夕紀
第6章 梅枝七海(18歳)=立松千宙(18歳)
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§1千宙との再会

梅枝(うめえだ)七海(ななみ)(18歳)>

 聖海(せいかい)女子大文学部1年生。静岡から上京し、大学の女子寮に住む。

 寮の先輩に勧誘され、千里大とのインカレサークルに入る。


 梅枝(うめえだ)七海(ななみ)は静岡の高校を卒業し、東京神田にある聖海女子大学に入学を果たした。東京の大学に行きたいと親を説得し、女子大で寮に住む事を条件に許された。初恋の相手である立松(たてまつ)千宙(ちひろ)とは、中学2年から別れたままになっていた。

 私は千宙君との約束を、まだ引きずっていた。『大学生になってお互いに彼氏、彼女がいなくて、好きな気持ちがあるなら会おう。それまでは、別に我慢する必要はないので、好きな人ができたなら仕方がないと思う。再会できる事を楽しみにいている。』という彼の手紙の言葉が、ずっと私の心の片隅を占めていた。


 七海は初めての一人暮らしと慣れない大学生活に忙しく、1カ月が過ぎていた。千宙の事を気に掛けていたが、忙しさを理由に連絡を先延ばしにしていた。千宙が今どうしているのか、自分の事など忘れているのではないか、無下(むげ)にされるのではないかと気になって連絡を後回しにしていた。七海がようやくその気になったのは5月の連休、よく言われる5月病にかかったようで、寂しさに耐えられずに彼の家に電話をした。ところが、彼は家にはおらず、名前と伝言を告げると、

「七海って?チー君の中学の時の彼女?わたし、萌香(もえか)だけど覚えてる?」と千宙の姉の萌香だった。自分の事を覚えていてくれて緊張も解け、彼の近況を聞き出す事ができた。千宙は千里(せんり)大学の理学部に入学し、1年生の内は家から多摩キャンパスへ通っているという。さすがに彼女はいるのかと聞けなかったが、七海は中学の頃を懐かしく思い出していた。

 次の日、千宙が家にいる時間に再び電話をすると、忘れもしない彼の声が耳元に伝わってきて、私は感激のあまり言葉が続かなかった。

「七海?元気にしてた?今どうしてるの?」と立て続けに()いてくる彼に、

「大学に受かって、東京にいるの。会いたいの。」とだけ告げた。携帯の電話番号を教え合い、明日の午後に新宿で会う約束をした。電話を切った後、私はドキドキしたままで興奮冷めやらず、電話でのやり取りを反すうしていた。久し振りの彼の声も上ずっていて、(うれ)しそうな表情が目に見えるようだった。


 連休の最終日、七海は少しでも大人っぽく見せようと、ひざ丈のワンピースにピンクのカーディガンを羽織って新宿駅に向かった。千宙はブルーのシャツにブレザーを着て、いつにないオシャレな服装で七海を待っていた。

 私が彼を見つけて近付いて行くと、上から下までなめるように見て、

「七海か?全然分からなくてごめん、別人みたいだ。」というのが第一声だった。

「千宙君こそ大人っぽくなってびっくりだよ。でも、顔は昔のままで安心した。」

「当たり前でしょ!顔が変わってたら、怖いよ。七海は昔に比べて太ったのかな、すごく女らしくて驚いたよ!」というセクハラめいた言葉は、相変わらずだった。


 二人で近くのカフェに入り、中学の時の思い出や高校生活の報告、大学の事などを止めどなく話した。お互いにわだかまりはなく、時間を忘れて素直な気持ちで語り合った。しかし、お互いに恋人がいるかには触れず、交際を再開する話は避けていた。その日は、千宙はバイトがあると言うので、また会う日を約束して別れた。


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