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SS

【SS】悪魔が約束を絶対守るって風潮あるじゃん?

掲載日:2021/06/08


悪魔「……私を召喚したのは貴様か?」


女「そうです」


悪魔「ふふふ、小娘ごときが私にいったい何の用だ」


女「契約して欲しいんです」


悪魔「ほほう! 悪魔に対して自ら契約を持ち掛ける奴など初めてだ! して、望みは何だ?」 


女「契約してほしいのです」


悪魔「話の分からん奴だな。だから、望みを言えと……」


女「まあ、私の話を聞いてください」


悪魔「……」


女「私、保険の外交員をやっているんです」


悪魔「ほう、みなまで言うな。成績が良くないのであろう? それで、世界一のセールストークを欲しているといったところか」


女「いえ、成績は会社でトップを張っています」


悪魔「……じゃあ、なぜ?」


女「つい昨日まで、毎日のように、訪問する全ての家々から契約を勝ち取ってきました」


悪魔「昨日まで?」


女「そう、昨日のことです。私は、次のお客様を求めてゼンリン地図を広げていました。そして気づいてしまったのです。私が担当する、この地区にはもう……私の取り扱っている保険に入っていない人がいないということに!」


悪魔「えぇ……めっちゃ、すごいやん。私も、契約をとってくるのが仕事みたいなもんだから。貴様のすごさが身にしみてわかるぞ」


女「お褒めに預かり光栄です」


悪魔「営業のコツとかあるの?」


女「まあ、基本的なところですけど。まずは、相手の興味を引くことですね」


悪魔「ふむふむ」


女「そして、心をつかんだ後は喋り過ぎないこと。むしろ、相手に喋らせることが重要です」


悪魔「相手に喋らせる?」


女「そうです。お客様の言葉というのは宝箱のようなもの。なんともない話からニーズを掘り起こすのです」


悪魔「簡単に言ってくれるけど、それが難しいんだよな~」


女「まあまあ、そこはテクニック次第ですよ。時に不安をあおり、時におだて、時にこじつけ、お客さんと商品を関連付けさせるのです」


悪魔「なるほどなあ……。でも、そういうテクニックを使うのって、ちょっと罪悪感がでちゃうんだよなあ」


女「その様子ですと、営業に苦労していらっしゃるようですね」


悪魔「そうそう。そうなんだよ。悪魔ってのも、なかなか大変でね」


女「やっぱり、魂をとってくるのが仕事なんですか?」


悪魔「基本はそうだね。相手の望むものを、提供して。代わりに相手からは、魂を受け取る感じかな」


女「支払いが魂でってなると、相手が尻込みしちゃいそうですね」


悪魔「そうなんだよ! ようやく契約がまとまりそうな段取りになったところで、びびっちゃう奴が多いこと多いこと!」


悪魔「呼び出しておいて、そりゃないぜ! って気持ちよ!」


女「ノルマなんかもあるんですか?」


悪魔「あるよ~、もうしんどいしんどい。中には、心労で倒れちゃう悪魔だっているんだから」


女「……へぇ、悪魔も倒れることがあるんですか」


悪魔「まあ、基本的な体のつくりは人間と同じだしね」


女「悪魔さんはくれぐれも、お体に気を付けてくださいね? 倒れちゃったら、大変です」


悪魔「へへへ、ありがとう。俺にも、家族がいるしね……まだまだ倒れるわけにはいかないよ」


女「……ねえ、悪魔さん。嫌な話になるんですけど、ちゃんと転ばぬ先の杖って用意してます?」


悪魔「転ばぬ先の杖?」


女「もし、悪魔さんが倒れちゃった時、ご家族を養えるだけの貯えはあるんですか?」


悪魔「……少しはあるけど。でも、子供もまだまだこれからお金がかかる時期だしなあ」


女「私……悪魔さんの、お手伝いができるかもしれません」


悪魔「あ、保険の勧誘? いや、うちはそういうのいいから」


女「いえ、いい機会です。ちょっと想像してみてください。悪魔さんが倒れてしまった時の、ご家庭の様子を」


悪魔「……」


女「大黒柱が倒れて、不安を抱かない家族なんていません。奥様やお子さんの、心労幾ばくか……」


悪魔「確かに、あいつらを不安な思いにはさせたくはないな……」


女「でしょう!? 私が取り扱っている医療保険に入っていれば、ご家族に心配をかけることもないでしょう」


悪魔「契約します!」


女「ありがとうございます!」


悪魔「いや~、してやられちゃったよwww流石、営業成績ナンバーワンなだけあるねえwww」


女「へへへwww有難うございます。あ、この保険にはガンの特約もあるんですが」


悪魔「ガンかぁ……、実のところ悪魔にとってガンが一番の敵なんだよねえ」


女「と、いいますと?」


悪魔「いま、一番、人間の魂とってくるのってガンなんだよ。あいつらが、ばんばん人間殺すせいで、こっちも商売あがったりさ」


女「でしたら、ぜひ! このガン特約で復讐をしてやりましょう!」


悪魔「そうだな! ガン特約も入ります!」


女「毎度!」


そして、月日が流れ


prrrrr prrrr


悪魔「あ、もしもし女さん? お久しぶりです~」


女「これはこれは、悪魔様。いかがいたしました?」


悪魔「実は、ガンになっちゃってねw保険に入っていて本当によかったよwww」


女「それはそれは……」


悪魔「まあ早期の大腸ガンで、命に別状はないんだけどね」


女「早期ですか……もしかして、『上皮内ガン』ですか?」


悪魔「そうそう、さすが詳しいね」


女「……申し訳ありませんが。上皮内ガンは、保険の対象外となります」


悪魔「はあ!?」


女「約款にも、そのように記載されてあります」


悪魔「いやいやいや、ちょっと待ってよ!」


女「詳しいお話は、当社のご相談センターへご連絡ください。それでは」ガチャ プー プー


悪魔「……」



悪魔「…………奴らの方がよっぽど悪魔だ」



おわり


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