蓮月ひなたは恋なんて知らない
蓮月ひなたは恋愛や異性関係が凄く苦手だ。
小学生のときから友達は誰が可愛い、誰が好きと話していたが俺は付いていけなかった。
全く興味ないわけではないがそんな経験をしたことがないので気持ちがないとか思われてるかもしれない。
それでも友達はいるし今の生活に満足している。
この春中学生になったひなたはいつも通りみんなの異性話を聞いていた。
「水無月さんがやっぱり一番可愛いよな」
「俺もそう思う。水無月さんは顔も可愛いけど性格も頭もいいよな」
友達のしんやとゆうきが水無月を可愛いと言う。
水無月ひかり、ミディアムヘアーで少しふわふわした髪型、スタイルは細身で守ってあげたくなるタイプ。
誰にでも優しく笑顔が可愛いいわゆるモテる女だ。
「ひなたは水無月さんのことどう思う?」
「おい!しんや声でかいぞ。水無月さんこっち見た!」
しんやとゆうきは水無月と目が合い赤らめてる。
どう思うと言われても...。
水無月は確かに可愛いかもしれない。
でも目が合って嬉しくなったり誰かを好きになったり可愛いなって見とれたりする感覚が...。
そんな感じで中学生になってもこの感情は変わらずだった。
いつか俺も誰かのこと好きになったりするのかな?そんなことを思いながら俺は何も答えずカバンに入ってたアップルパイを出し一口食べた。
放課後ひなたは友達と別れて家へと急ぐ。
今日はひな(母親)がアップルパイを焼いてくれるからだ。
「焼きたてのアップルパイが1番美味しいんだよな。早く帰らないと」
そんなことを思いながら歩いてると遠くの方でカップルが手を繋いで歩いてきた。
男はカッコいいけど女は地味だな...。
しかも古典的に黒髪、三つ編み、メガネって。
恋愛ってますますわからね。
カップルを通りすぎたとき何やら後ろの方で叩く音がした。
さっきの女がこっちに向かって走ってくる。
男はそのまま真っ直ぐ反対の方を歩いていった。
「おいおい。まじかよ...」
目の前で女が転んで倒れた。
アップルパイが俺を待ってるのに。
めんどくさいなと思いながらも俺は声をかける。
「えーっと大丈夫ですか?」
俺はハンカチを差し出す。