〈7〉バロンと古い地図
夕飯を終えて、自室でネコ紳士の人形を見つめるしずく。
「大事なものだって言ってた・・・」
すると、ネコ紳士の人形のしっぽがくねり、しずくの指にからむ。
「ひゃっ」
『バロン』の目が緑色に光る。
「わ、わっ」
しずくはあわてて、ネコ紳士の人形を抱えて、リビングへ走る。
余ってぶつかりそうな勢いで人形をテーブルの上に置くと、すぐに離れた。
その物音に、母と話があると言っていた姉が出てくる。
「なに?」
「ね、ネコっ・・・」
「ん?」
テーブルに置かれたネコ紳士の人形が、帽子を使った挨拶をする。
「近々白い薔薇とラピスラズリの鉱脈を探しに旅に出られるとか」
姉に抱きつくしずく。
「な、なにっ?」
不機嫌そうな姉。
「なに、あんた?」
「失礼、しょうせい名をバロンと申します」
「なんの用なの?」
「ゼロからの願いで、旅のおとも、いざつかまつらん」
「ゼロの想いっ?」
「そういうの聞いたことあるけど、しずくの彼氏は魔法使いなわけ?」
「いや、そうでないのですよ。美しい姉君」
「あんたが誰かの魔法なのは気づいてたわよ」
ええっ、という顔をするしずく。
「姉君、このバロン、白薔薇探しの旅のお手伝いいたしまする」
「もう決まってるわけ?」
「さよう」
寝室から、カーディガンを肩にかけた母が壁にもたれ気味に顔を出す。
「どうしたの?」
「ああ、母君。ご加減はいかがですか?」
「なんだ、ケンカかなんかだと思ったじゃないの」
しずくは母に言う。
「どうして驚かないのっ?」
「あら、あんたが眠ってる時に、このネコちゃん相談に来てたのよ」
「それを私は見かけて、あんたに黙ってたの」
「なんで言わないのっ?」
「ある程度の期間、黙っていてくれって言われたのよ」
「お母さんは部屋に戻るわ」
バロンが言う。
「母君、旅のともの件・・・」
「オッケー、オッケー。きっとあのひとも賛成よ」
姉が腕を組んでバロンに言う。
「魔法で白薔薇出しなさいよ」
「ムリでござる・・・」
「しずくのこと、ちゃんと守れるんでしょうね?」
「この命にかえてでも」
「ああ、そう。しずく、もう眠りな」
「え・・・」
しずくとバロンは見つめ合う。
バロンが気を使って、人形に戻る。
しずくは瞬き、母にお休みの挨拶をした姉に、腕を引っ張られる。
「ほら、もう、眠るよ」
「これくらいのこと乗り越えないと、旅はできないってことっ?」
「魔法使いに体術が利くかどうかなんてわかりゃしないのよ」
「お姉ちゃんって、何があったの?」
自室の扉を閉める姉。
「お姉ちゃんは魔法がちょっと使えるのよ」
「ええっ?」
「ここらの国は、昔昔に魔法領国って呼ばれたでしょうに」
「わたしも使えるかなぁ?」
「いいから、もう眠りな」
「おやすみなさい」