停戦協定
おれが放課後の生徒会室で書類仕事をしていると、
「ねぇ、雑魚君ちょっとミルクティー買って来て」と天野川 青空が言ってきた
「なぜおれがセ・ン・パ・イのミルクティー買ってこなければらない」
「おつりあげるからさぁ~ねぇ~」
「はいよろこんで先輩」とおれが言うのと同時に、指弾ではじかれた五百円玉が額に張り付いた
おれが好敵手である、天野川 青空を先輩と呼ぶようになったのは、深海より深い理由があった、俺はこの異世界においても、貧乏であるらしく、昼飯は中庭の草をたべていたのだが、もちろん食べられる奴だけを選んでいる、しかしそれを食べつくしてしまって、飢え死にしそうなところを助けられ、食事の継続的な援助受ける代わりに、生徒会室およびその周辺での停戦協定を結んでいた。
「あなたは私の好敵手じゃなくて後輩って設定にしてくれたら、食べ物恵んであげるけど、どうする?」てな感じのことを言われ、生徒会室限定でという項目を交渉の末、追加し承諾した、マジで命があぶなかったのでしぶしぶだが、ちなみに毎日カップ麺が二つも支給される。
先輩後輩の間柄になって天野川 青空についてわかったことがいくつかある、クラスメイトの前では猫をかぶっている、見た目通りのクールな優等生って感じでふるまっているが実態は下の弟のことをパシリに使う横暴な姉って感じだ、まぁ面倒見がいいからわりとゆるせてしまうのだが、あとわりと話のわかる奴だってことだ。
「はいどうぞ先輩」
ミルクティーを机に置くと、だるそうに軽く手をあげた、一応、感謝の意を示したらしい、おれはポカリをゴクゴクと一気にあおった、ポカリは点滴と同じ成分らしい、先輩に教えてもらったことだ。
右手で宿題を、左手で書類仕事をしながら、
「そういえば、明日予算委員会が生徒会室であるから、雑魚君書記ね」
「書記ってなにするんですか?」
「雑魚君は黙って座ってくれてればいいわ、あの病気を発症しないようにね」
「貴様」
「あーごめんごめん、おかしたべる?」
しばらく他愛ない会話がつづいた後、先輩が
「ねぇ?」
「はい?」
「一発本気で殴っていい?」
「いやだよ!!死ぬよ!!」
「それが死ななかったのよ」
「どういうことですか?」
「いやなんというか、手が滑ったというか…」
「手が滑ったで人殺すな!!」
「それをいうなら、あんたが……なんでもない自分でトラウマほりかえすとこだったわ」
先輩が軽く肩をもんでから、机に突っ伏した
「このはなしはやめやめ」
「自分からはなしふったんだろが」
しばらく時間が経過した
「わたし寝ちゃったのか」と青空がつぶやく、部屋の時計をみる、夜の九時を回っていた、雑魚君の姿はない、こんな時間なので先に帰ったのだろう、軽く伸びをしようとすると、肩に学ランが掛けてあった風邪を引かないようにと気をつかってくれたのだろうか、なぜか一緒にYシャツも掛けてあった
「あいつ上裸で帰ったの、バカか」あの病気さえなければ、あつかいやすい、じゃなくてかわいい後輩なのにと思い笑みがこぼれた。
「この制服どうしようかな、まぁいいか、帰ろっと」机の上に軽く放っておいた
次の日の放課後、おれは生徒会室にはいると、満面の笑みを浮かべた先輩にでむかえられた、ちなみにおれは上裸だ
「はい、カップ麺」
「どうも…」おれはお湯をそそぐ、
「お湯注いだ?雑魚君」
次の瞬間、俺の意識はとぎれた…
「恐ろしく速い手刀私以外には繰り出せないわ」邪悪な笑みを浮かべた、先輩を見た気がした
目を覚ますと、おれは四つん這いになっていた、これはどういう状況だ、体が動かない
身体の感覚がなかった、指パッチンの音とともに、背中に重みを感じた、
スカートの下にジャージをはいた、先輩が足を組んで四つん這いの体勢の俺に座っていた、腹の下にはさきほどお湯をいれたカップ麺がおいてあった、手足がプルプルと震えだした、催眠術か何かか?
「雑魚君おはよう」
「おい、今は停戦中のはずだぞ」
「きのうね、殺人未遂って私のこのきれいな顔に落書きされてたのぉ 犯人は一人しかいないよねぇ~」
「いや、絶対ばれると思って実行したら成功してしまったんだ、貴様が無防備すぎるだけだろというか事実だろ、昨日テメェでゲロッたろうが」
もう一度、指パッチンをならされる、一気に重みが増す、手足がもう限界だ…歯を食いしばる
「雑魚君、あなたいくつなのぉおお?小学生じゃあるまいしぃい」
「ビッ〇と書かれなかっただけありがたいと思え」
「はぁああんわたしはまだ…って何言わせようとしてんだ!!このセクハラ野郎!!」
「きさまぁああ、カップ麺は無関係だろ、奴に罪はない!!にげろぉおおカップ麺いまだ俺が食い止める」
「わたしはアンタみたいな、バカと違って世間体ってものがあるの、わかる!?」
「ぐぬぬ」今の体勢を維持するために、答える余裕がなかった
「あれぇ~どうしちゃったのぉ、お返事がきこえないぞ~ちなみにぃ~皮膚の感度をあげておいたからぁ~お湯とかかかったらスゴイ熱いとおもうよぉ~」
「食べ物を粗末にするな!!」
「粗末になんてならないでしょ、だって床にこぼれたカップ麺くらい雑魚君ならおいしく頂けるんだから、なにせ、中庭の草を主食にするくらいだし」
「貴様そこまで魔に落ちたか!!」
第三者からみたら、いやまごうことなき謎のプレイだった、SM的な意味で
このとき、予算委員会の出席者たちが、半開きのドアからこの光景を目撃していたが
恐ろしく速いアイコンタクトをとり、このことは忘れようとみんな帰路についた、あそこに足を踏み入れていたら間違いなく死んでいたとのちに語ったという
好敵手とは時に背中を預けあう関係という話である。以上
謎のプレイも終わり、夕方の六時ごろになっていた
「そろそろ、帰りましょうか雑魚君」
「先輩、今日、予算委員会があるって言ってませんでしたか?」
「そうね、忘れてたわ、誰も来なかったし別の日だったかな?」
なんやかんやで生徒会室限定で先輩後輩の関係は続いていくのであった…。