王者の殺気
天野川 青空は人生で一番といってもいいほど、疲弊していた
「あの雑魚め」とひとりつぶやいた、あの男は遠慮というものを知らない、放課後、生徒会室にあらわれては、好敵手よ!などと意味不明なこといって、勝負を吹っかけてくる、もちろんすべて無視している、あの男の姿をみると、あの感触をおもいだしてしまう
「うっ…」まためまいが 客観的にみても私があの男と比肩しうる要素はなにひとつもない、そもそも、この学校にいることが不思議なぐらいの凡庸だ、ましてや、どうして生徒会に任命されたのだろうか… いや、考えるのやめよ
だから私は、結界を張ることにした、放課後、生徒会で毎日会っていては身が持たない、逃げるようで癪だが、あの男のペースにのることもないだろう、結界といっても魔術、異能の類ではなく、意志の力によるものだ、訓練すればだれでもできるようになる。
王者の殺気
この結界は、小学校のころ毎日のように告白されていたので、断るのが面倒になり、編み出した、告白除けの結界を昇華させたまでだ、この結界は、出力を調整できる低出力でも、並の人間なら立ち入れなくなるものだ、最大ならどんな強者も昏倒させることができるだろう。
ちなみに道端であった黒いあいつはこれで退治できるので便利だ
生徒会の業務も私一人で十分だ、二年生の子はそもそもきていない
目をつむると、結界を生徒会室周辺に低出力で展開した、「ふう」とため息をつき、これで平穏な日常がおくれると思った矢先、生徒会室のドアが勢いよく開かれた。
「フハハハハ、逃げずに来たか、我が好敵手よ!!」とあの男が入室してきた、
「なんだと…」とお約束の反応をしてしまった、
つづけて、「それに来たのはあなたでしょ!!」無視を決め込んでいたのに、つい反応してしまった。
「一体あなた何者なの?」
「フン、何度も言っているだろ、もう忘れたのか貴様の記憶力はミジンコ並か」
「じゃあ聞くけど、あなたとわたしがなんでライバルなの?」
「いずれ時が来ればわかることだ、フン」とこの調子で無駄に体力を消費させられて
一日が終わった。
天野川 青空はその日から着実に壊れていった…
反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、反応したら負け、
それは、五月に入ったある日のことだ、もう限界だった、「フフフ、いいでしょう決着をつけましょう、雑魚くん」青空はあの男のことを、雑魚君と呼ぶようになっていた、それくらいには壊れていた、自分でつけた蔑称に敬称をつけていた。
彼女は、王者の殺気、全開出力で展開した、「さぁ…いらっしゃい雑魚くん」、彼女はこわれていた、侵入させないための結界のはずが、結界の最大出力で昏倒させるのが目的になっていた、そう彼女は壊れていた。
「ねぇ…どうして約束の時間になったのにきてくれないの…」もちろん約束などしていない、
「ああ何かあったのかなぁ…私心配になってきちゃった」別の出会い方をしていれば、萌え台詞にもなったかもしれない、
「ああ…ばやくあいたいよぉおおお、ざごぐぅううん」こっわ…
王者の殺気の全開出力はいくら彼女でも、消耗が激しい、きれいな黒髪はぼさぼさで山姥のようだった、本来の彼女を知っているものがみたら、天野川 青空とわかる者はいないだろう
ピンポンパンポーン♪と校内放送がながれはじめた、「あーテステス」小さな咳払い「フハハハ、聞こえるか我が好敵手よ、今日はスーパーの特売日なので、貴様にかまっている暇がなくなった、ここは一時休戦といこうではないか、それでは」
天野川 青空のなかで決定的な何かがきれた、「びゃああああはあはっはっははっはH、にがざないわぁあああああああああ」青空は人間をやめた
彼女は、四足歩行の獣ごとく、放送室に向かって疾走した、そのあとはもうお約束だった、カップルの痴話げんかのようなものが、学校中に流れたが、それが青空だと気づくものはいなかった。
「会いに来てくれないから、会いに来たのよおお!!」
「誰だ貴様は!!!」
「なにいってるのおお 毎日、あいにきてくれたじゃなああない」
「うわぁあああやめろ、やめろなんでもしますかぁあああらゆるしてください」
「いまぁあ、なんでもするっていったよねぇぇ」多分こんな感じのやりとりがあったのだろう
その次の日から、二人は一週間学校を休んだ、またも勝負は引き分けに終わった。青空はこの時の記憶を完全に封印したが、雑魚君という呼び名だけが残った。