【08】帰省
あれから月日は流れ何の情報も得られないまま、私とアリスは11歳になっていた。今日をもって学園を卒業である。時が経つのは早いもんだ。特に大きなイベントが無かったからな!
…と言うのは置いといて、卒業する事によりこれからは冒険者として、世界を回ることになるだろう。もし、その旅で何かしら分かればいいのだが。
アリスはかなり立派になった。あのころと違い、剣士としてかなりの腕を持っている。そして、何処かとは言わないが2つの山もとても大きい。多分DかEくらいあるんじゃないの、あの子。それに対して私はぺったんこ…と言うほどではないが、小さい。大体A、Bくらいなのだ。男の頃は小さくてもいいだろとか思ってたけど実際体感するとなんか劣等感湧くよ…ちなみにグラムは正真正銘のぺったんこ。AAだ。元が剣だし仕方ないよね。
「ねえ、リリーちゃん。これからどうする?」
「んー、まずは実家に帰るかな。折角だし、故郷で初仕事したいしね」
「そうだね、これからもよろしくね」
「もちろんだよ」
卒業した私達は一度実家のある町に帰ることにした。久しぶりの家だ、手紙は既に出してるし届いているといいな。
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まずは帰る手段を探さなきゃな。多分馬車が出るはずだから時間を確認しておくか。
「えーと、明日の予定は……ふむ、昼頃に出るのがあるね。これにしようか」
そういう事だ、アリスにも伝えておかなきゃな。
「おーい、アリス。明日はこの時間で……あれ?どこに行った?」
目を離したら消えていた。もしかして誰かに誘拐されたんじゃって思ってたら、
「ごめんごめん、今日でしばらくはノアの街には来ないでしょ?だからちょっとだけ寄り道してた」
なんだ、それなら言ってくれよ。一緒に行きたかったのに……
「いきなり消えたから心配したよ。出発は明日だからどこかに泊まって行こうか、もうすぐ夜になるしね」
「そうだね〜、そうしようか」
近くの宿を見つけ、そこに泊まることにした。なんだかんだ言ってアリスと同じ部屋で一夜を過ごすのは初である。もちろんグラムもいるけどね!
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朝、いつも通りに起きた。今日でしばらくノアの街とはお別れだ。そう思うと少し寂しい所もあるが仕方ない。いつかはまた寄ることにはなるからね。さて、アリスとグラムを起こさないと。
「ほら、二人共さっさと起きなさい!」
「リリーちゃん……あたしまだ眠い……」
「マスター、もう少しだけ……」
よし、グラムだけ叩き起こそう。アリスはいつも通り優しく起こすか。
「さっさと起きんか!」
グラムに全力の喝を入れた。
「あいたっ!……マスターもう少し優しく起こしてくださいよ……」
「あんたは丈夫だからこれ位で傷一つ入らないだろ」
一応魔剣だからな。むしろこっちが怪我するかもしれないだろ。
「ほら、アリスも起きる!いくら出発が昼だと言ってぐーたらしない!」
「マスター!?私と結構起こし方に差があると思いますけど!」
「気にするな!あんたとはもう(前世と合わせて)十年以上の付き合いだぞ。少しくらいは雑になるわ!」
この数年で私とアリス、そしてグラムの三人はもはや姉妹の様な仲になっていた。いや、グラムとは昔からそのような状態だったけど。
いつも通りに騒がしい朝。それが終わると、私達は故郷に帰る為に支度を始めたのであった。
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時間は流れ昼になった。昼食を済ませ、私達は馬車に向かった。これでノアとはしばしのお別れとなる。楽しかった思い出、この街でアリスと出会い、今ではとても大切な親友にもなれた。そして、グラムとも再開した。彼女がこの場所に送られたのは何かしら意味があるのだろう。ともかく前世の自分を知っている人が居るだけでも心強い。
馬車が出発した。この光景は十年も前に見たものと変わらない森の中だ。移動には時間がかかるからゆったりするか……
馬車が止まった。何があったのだろうか。
「どうしたんだろう?」
不思議に思ってたら外から、
「皆さん、落ち着いて聞いてください。この近くで山賊が現れたそうです。遠回りする事になりますのでご了承ください」
山賊かぁ。この世界にもいるんだな。正直襲われたところで、グラムがいる限りどうにかなるんだけどね。
馬車が遠回りしようと動き始めた時、
「おい!そこの馬車、止まれ!」
外から大声が聞こえた。あれ?もしかして出くわしちゃったのかな?
「どうやらそこのやつ、人を載せてるようだな。今すぐ降ろして貰おうか」
あちゃー、めんどくさいやつだなこれ。どうしたものか。
素直に私達乗ってる人達は馬車から降りた。抵抗すれば殺されかねないしね。とっとと片付けたいところだが……
『マスター、私が殲滅してきましょうか?こいつら雑魚でっせ』
『いや、まて。折角だ。私の魔法の実験台になってもらう』
「なかなかいい女がいるぞ」
アリスが目をつけられた。
「そこの二人もちっさいけど上物ですぜ、アニキ!」
「胸の小さいやつなんていらん!大きいのが正義だ!!」
よし、こいつ殺そう。ちっとばかし準備はかかるがアレ……試してみるか。周りの被害なんてしらん。こいつら跡形なく吹き飛ばす。
「よし、まずはお前ら持ってるもの全て置いていけ!殺されたくなければな!」
私は既に魔法の準備をしていた。簡単なことだ。意識を空に集中して魔法陣を思い浮かべる。そこに魔力を注いで一つの大きな陣を作り上げる。
「おい!聞いてんのか、そこのつるぺた女!」
内心キレそうになったが気にしては行けない。集中、集中。
空をちらっと確認するとしっかりと魔法陣が作られていた。便利だなーこの体。なんでも出来ちゃう。
「盗賊さん?私ばかり気にしないで後ろの仲間を気にしなくていいんですか?」
「はぁ?なんでそんな事しなくちゃ行けないんだよ」
「分からない様なら味わった方が早いですね」
「貴様、さっきから何言ってやがる!殺されたいのかこのや……」
山賊がなんか言ってる間に私は用意してた術式を後ろにいる手下共目掛けて発射した。
「涙の流星よ、光の矢となれ」
一筋の光が私の展開した魔法陣に当たり、さらに広範囲となり地面に降り注いだ。その一撃は神の天罰のように……
周り一面が更地になっていた。近くに居た私は着弾と同時に防御結界を貼っていたので無傷だが、山賊のリーダーを除いた全員がその場から消え去っていた。
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ」
おいおい、どっかのタンスに隠れてる人みたいに震えてるぞこいつ。
「で、何ですか?山賊さん」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ」
こりゃだめだ。それより思ってたよりこれ火力高いな。封印しとかなきゃまじで人的被害がやばいものになるぞ。昔見たゲームの必殺技を真似してみたらこの威力とは……驚いたもんだ。
その後、山賊のリーダーは駆けつけた憲兵によって連れていかれた。もちろん私もこの更地にした張本人としていろいろ聞かれたが、山賊が捕まった事で見逃してもらえた。さぁ、私達の故郷までもう少しだ。
さて、今回から本編です。幼少時代は短めなのは許してください。