勇者と魔王
勇者―29歳。来月三十路。
魔王―年齢不詳。割と良識的。
「魔王、今日こそお前の首貰い受ける」
「勇者よ、その台詞通算365回目で一日一回でカウントするとちょうど一年だ。
いい加減聞き飽きた。バリエーションを考えて出直せ」
「ならばそろそろ死んでくれないか。
じゃないと俺も故郷に帰れない。帰っても追い出される」
「同情はするが死んでやる気にはなれんな」
「いや、初めてあった時が俺が19で、今現在29。
十年以上頑張ったしそろそろ死んでもいいんじゃないか?」
「何だお前。来年三十路か」
「・・・・今年だ」
「・・・・・・・・・・まぁ・・その・・・なんだ」
「やめろ。その同情と哀れみに満ちた目でみるな。
俺だって悲しいさ。でも現実はいつだってすぐそこに・・・クッ・・!」
「いや、泣くな泣くんじゃない勇者よ」
「ってか三十路で勇者ってなんだよ・・・・
三十路のオッサンがいい年こいて勇者ってお前・・・・」
「待て勇者。その縄をどこから取り出した。
そしていつの間に我の城の天井から吊るしたのだ。
っておい待て本当に待てその輪っかに首を入れちゃだめだ。
落ち着け。落ち着くんだ落ち着いてその台から降りてこっちへ来い」
「とめてくれるな魔王・・・。俺はもう人生に疲れた・・・」
「・・・・」
「?どうした魔王。なにやら気まずそうに眼をそらして」
「いや・・・、なんでもない気にするな」
「気になるな。言ってみろ」
「うらぶれた30過ぎのオッサンに見えた」
「死のう」
「いや、待て!そう早まるな!我が悪かった!
確かに今のはデリカシーが足りなかった!だからやめるんだ!」
「魔王・・・俺は今ここで死ぬが覚えておけ。
俺が死んだとしても必ず第二、第三の俺が――「いや、それ我の台詞じゃね?」
「・・・もういい死ぬ」
「だから待て」
「縄を切るな」
「ならばやめろ」
「・・・こうなったら自爆魔法でもなんでも使って死んでやる」
「だからやめろっちゅうに」
「何故とめる」
「我の城が壊れる。我にホームレスになれと?」
「じゃあ縄を戻せ。首吊って死ぬ」
「だから死ぬなというに分からん奴だな」
「いや、だって本当もういいんじゃないか?
文明開化が進むこのご時勢に魔王退治って・・・勇者って・・・。
村の奴らも頭おかしんじゃないの?俺もうオッサンよ?
いい加減後継をよこしてもいいのにさ、いつまでも現役よ?
もう俺見限られてんのか?そうなんだろ?いらなくなったらポイだろ?
それが現代社会なんだろ?クソッタレ皆死ねばいいのに。
いや、そんな受動的ではダメだな。そうだ世界征服を――「待て待て」
「またか魔王。お前もいちいち俺の邪魔をしおってからに」
「勇者よ。我も長年魔王をやってきたが、
魔王の我を差し置いて世界征服をしようとした勇者はお主が初めてだ」
「ハッ、最早勇者魔王で正悪を判断する時代は終わってんだよ。
世界を見てみろ。魔王が良い人サイドである小説いっぱいあるから。
だったら勇者の俺が世界制服したっていいじゃない。」
「本当待て勇者。一回病院行こう。
ホラ、王都に最近有名な精神科医がいるって言うし」
「俺は医者は好かん。特に歯医者は悪魔の類ではないかと常日頃考えている」
「・・・お前、三十路にもなってそれか・・・・」
「馬鹿お前。あのキュィーンって奴マジ怖いんだぞ。
しかも麻酔とかめちゃくちゃいてーんだぞ。医者のやろう手震わせてんだぞ。
本当今から改造されんじゃないかって不安で不安で」
「そういったところばかりは童心のままなのだな」
「喧しいわ」
「まぁ、ところで今更かも知れんのだが、我の首はいいのか?」
「あ?あぁ、ハイハイ魔王の首ねハイハイ。
何かもう良いわ。今日は帰って酒飲んで寝る。丸々三日は寝る。んじゃ」
「んじゃって・・・・・・行きおったわ。
最近アイツ我に愚痴いいに来てないか?」




