希望の光と女神の盾
『希望の光は黎明に 黒を映して白になる 怪盗千字』
女優の卵が通う愛光女子高等学校の、高倉理事長に犯行予告が届いたのは夕方過ぎの事だった。今回の標的は理事長室に飾られた名画【希望の光】。
「南警部補! 校舎に残る男性は高倉氏のみとなりました」
「田口警視長の読み通りならば、以前、古川警部に変装していた千字も女性に成り済ますのは難しいはず。皆! 女神の盾作戦、開始よ」
千字の変装を警戒している南は、高倉の本人確認など疾うに済ませていた。現場の人間にも、手荒ではあるが女性ならではの確認をしてある。
30名を超える女性警官が廊下を見張り、理事長室には南の他にも3名の女性警官、夏目教諭と由美教諭、そして唯一の男性、高倉が見張っていた。
「4時を過ぎたわ。予告通りならばこの明け方に何かが起こる筈よ」
南は現場の警官達に注意を促す。
それから間も無くの事。理事長室の蛍光灯がフッ、と光を消した。しかし、何故か部屋は暗闇にならない。
「南警部補! 希望の光が……光っています!」
南は自分の目を疑った。
「嘘……! 今度は希望の光が、消えた!?」
厭、真っ黒になったと云うべきか、黒いその名画であった物は僅かながらに光を零している。
「皆! これはモニタよ! 名画はとっくにすり替えられていたのよ。蛍光灯も恐らく時限式の細工――」
「刑事さん、あ……あれは」
夏目の指差すモニタに映し出されていたのは、ラブホテルの様な部屋で静かに眠る女性の姿。
「1のC、うちの生徒の霧山さんよ! なんで、どうして?」
由美はその場にへたり、と力無く座り込んだ。映し出された映像には眠る女性を取り囲み、気持ちの悪い笑みを浮かべる男たちが居た。
「野渕先生に、湯澤教頭……それに理事長」
夏目もまた、吐き気を催す様な映像に、叫ぶ声すら失っていた。
「こんなの出鱈目だ! 合成だ! 罠に嵌められたんだ!」
怒声を発して部屋から逃げ出す様に走り出す高倉。
「こんなの、全部、嘘じゃああ!」
「確保ォー!」
南は高倉の怒声を掻き消し、警官達に指示を出す。鬼畜な下衆に情けは無用!
数日後、女生徒達の被害届を受理し、映像の事件に関わった者達は皆、逮捕された。
被害者は確認出来た数だけで10名を超える。裏口入学の甘い罠、押収された販売目的の映像記録。南の眼には怒りと哀しみの雫が滲んだままでいる。
「警視長に化けてまで、女神の盾を提案したのね……怪盗千字、あの学校を白くしてくれた事だけは感謝してあげるわ」
生々しく、どんな映像が映っていたのかをR-15らしい儘に表現するにはどうしたものか、と悩みつつキッカリ1000字で決められてホっとしております。
字数の縛りもありますが、映像の生徒達に何があったのか、事件にかかわった者たちとは、教師達以外にどんな人たちが居たのか。綺麗に省略させていただきました。
さて、本文中の女性ならではの確認でございますが、これについてはですね。ええ、その、はい、まぁ。