悠志と妖怪たち
悪い気が漂ってる
桜が満開に咲き誇る通学路。その明るい気にそぐわない気配があたりに漂っていた。
朝からか・・・
悠志は深くため息をついた。
悠志は幼い頃から妖怪というものが見えた。
どうやら先祖が陰陽師をしていたらしく、今でも力を持つ者が度々現れるのだとか。
その力が、自分にはあるらしく、しかも相当強いものらしい。
その力を使って、妖怪にとりついた邪鬼という形のない悪しき物を祓う家業をほそぼそとやっている。
正直、とても面倒くさい。
せめてもの救いは同年代にも数人見えるものがいることだ。
近頃は数年間に一人か二人ほど生まれるぐらいのの割合だったらしいのだが、今俺が知っている限りでは、妹の京香、幼馴染の由加、隣町に三人。まだ知らない奴もいるかもしれない。
一人じゃなくて本当に良かった、としみじみ思う。でなければ、孤独になっていただろうから。
それを想像すると、怖くて仕方ない。
「浅生、おはよう」
暗い気分になっているとから肩を叩かれた。
「あ、おはよう、加村」
「なあ、ここらへん空気重くないか?」
振り返ってみれば同じクラスの加村だった。ギクリとした。
まさか、感度が強いのだろうか。襲われてしまう。だったらここに居るのは少しまずい。
「そうか?月曜日だから気分が重くてそう感じてるだけだろ?」
「そうか?」
納得がいかなそうな加村を笑って流し、
「あ、俺ちょっと忘れ物したから一旦家に戻るよ」
と言ってその場から離れる。
そう話している矢先から、少し離れた茂みのあたりに影が見えた。