飛ばされた少年
「は?」
一瞬の出来事に悟は混乱していた。
風間に掌を向けられた瞬間悟はここにいた。
ここは先ほどまでいた教室と同じように思えるが、左右逆だ。まるで鏡の中の世界のように全てが反転している。
「雫は?」
周りを見ても一緒に学校に来た雫の姿がないことに悟は気付いた。どうやらこの場所に来たのは悟だけらしい。
「まずいな・・・風間になにもされないといいが・・・」
そう願ってはみたもののそれは望み薄だった。風間は雫を殺す派閥のメンバーだ。邪魔ものの俺を排除した時点でやる事は決まっている。
悟は歩き出した。望みは薄いが出口や脱出に繋がる手がかりを探そうと考えたのだ。
この世界はどこまであるのか。もしかしたら地球そのまま反転させた世界かもしれない。もしそうだったら手がかりを探す範囲は果てしない。
苦笑いを浮かべながら悟は学校中を歩き回った。いつもと左右が逆なだけで勝手が全然違う。迷子になりかけながらも悟は色んな教室や職員室や体育館などを探索して回った。
しかし、これと言って手がかりとなる物は見つからなかった。
「ここにはないのか?」
悟は学校の外に出てみた。やはりこの世界は学校外にも広がっている。
そもそも手がかりなどあるのだろうか。そんなことを考えるくらい悟の気持ちは弱くなっていたが、足を止めることなく学校を出た。
しかし、特に当てなどない悟は自分がよく行く商店街や公園、そして家へと向かった。
「本当に逆だな」
商店街を歩く悟は言った。店の並びもそうだが文字なども完全に反転している世界に感心してしまった。
商店街でもこれと言って成果を上げられなかった悟は家へ向かった。これまでずっと反転世界で歩き回っていたからか、慣れてしまい家へ行くのに苦労はしなかった。自分の順応性の高さにただただ悟は驚いた。
家の中も反転してるだけで特に変わった様子はないようだった。
「疲れたな・・・」
悟はリビングのイスに座りお茶を飲んだ。身体的にも精神的にも疲れていた。
その時、携帯が鳴った。