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第四話:不幸人間とテロリスト

この小説は、サブタイトルの『○○人間の~』の、○○人間によって視点が変わります。文章は第三者で書いていますが、○○人間が思っていることなど、個人的な考えや出来事で区別があります。

この世の中には、然程不幸でもないというのに己の人生を蔑み、憎み、

その不幸話を、小説などを通して世間に公開して、他人の哀れみや優しさを感動しながら受け取る者がいる。


だがそれは、決して著者だけ利益があるのではない。

そういう小説を読んだ人々は、「自分よりも、こんなに苦しんでいる人がいる」「自分も頑張らなくちゃ」と思い、自身を励まして次の未来へ歩むことができる。


人には優しい気持ちがある。不幸だなと思った人々は、著者を思いやることだろう。


だが同時に、人は“他人を妬む”気持ちも兼ね備えている。


仮に著者が、自分の不幸を公表してから結婚し、夫婦円満な人生を築くとしよう。

勿論人は喜び、それを祝福する。なぜなら、人には優しい気持ちがあるからだ。


表ではそうかもしれない。だが裏では無自覚に思ってしまうのだ。


「なぜこいつだけが幸せを手にするのか」と。


なぜそう思うかと問えば、こう答えるしかない。人には妬む気持ちが同時にあるのだから。

例えその気持ちは、自覚していても。そのことを醜いと思おうが、消すことはできない。



人は自分と他人を比べて、初めて気持ちを持ち直し、前へと進むことができる。それが例え、悲しみや憎しみ、妬みでも…



人の心は、なんと滑稽なことだろうか!!!!!




『他人の不幸は蜜の味』


それは、人間の本性を表すような醜い言葉でもある。



――以上の理論を、僕は真摯に生きてきた人生の中で見出した。


この『不幸心情理論』に口を出すのは様々だが、それでも僕の考えは変わらない。



過去に僕は自分を“不幸人間”と蔑み憎み、自分よりも幸福な人々を妬み、そして優しさ故に励まし続けた。

だがそんな自分に嫌気がさした僕は、とうとうこの『不幸心情理論』から抜け出す方法を発見した。



それは……




~~~朝 介護施設受付にて~~~



「静かにしやがれ!!」


その怒鳴り声に、人々は恐怖で震え上がった。


ここはとある介護施設の受付。ソファで座ってくつろいでいたり、家族皆笑顔で仲良く話していた人々は、受付近くで一塊にされると、銃で脅迫され、身動きがとれない状態になっていた。

自称不幸人間の五十嵐いがらし朝黒さくろもその内の1人であり、人生の中でも修羅場と呼べるこの状況を密かに満喫していた。


緊迫し、張り詰めている空気。


怯える恐怖に包まれた人質達。


そしてその恐怖に気圧されることもなく、不気味な笑みを浮かべる自分。


全てに対して快楽を覚えている朝黒は、サイコパスと言われても仕方ない程の末期だった。



テロリスト達が人質をとってまで要求しているのは、1000万円、とのこと。


なるほど。介護施設には体を壊している人がほとんどで逃げづらい、と考えたのだろうか?そして1000万円を手に入れれば、豪遊し、膨よかな体を手に入れ、人生を楽しく過ごせる―


朝黒は哂った。なんて順風満帆で幸せに満ち溢れた生活…



「素晴らしい人生じゃないか!!!」



一瞬と思えて、長い長い沈黙。



「おいてめぇ!!うるせぇんだよ、ふざけた事ほざくな!!!」


ぴりぴりとした空気の中で、テロリスト達が激怒するのも無理はない。彼等だって、一瞬でも油断や隙を見せれば警察に突入されるのが落ちであり、気が散るようなことをされれば怒るだろう。


「ふざけた事?それは欲望ばかりを唱えるあなた達の方ではないのですか?」


至って冷静な朝黒の発言に、逆上したテロリスト達はとうとう堪忍袋の緒が切れた。


テロリストの1人が、朝黒の襟元を掴んで無理矢理立ち上がらせると、右頬を思いっきり殴りつけた。そして、地面に倒れこんでいる朝黒の眉間の間に銃をつきつけ、


「これ以上うぜぇこと言えば…ぶちぬく」


と、冷たく言い放った。その言葉に、脅迫されている人々は更に恐ろしさに身を震わせた。


だが、殴られて更に恐怖を味わったはずの朝黒は微笑んでいるだけだった。



テロリスト達を、その瞳に映しながら。

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