※仲直り ←not 手紙形式
山なしオチなし、とはこのコト。
放課後。
何時もの帰り道。
夕焼けに焦げたアスファルトの上を歩きながら。
「流石に彼女に甘えるのはね。僕の性に合いませんな」
「でもっ、先輩……六郎先輩。悩みぐらいあるんじゃ……」
(ああ、また押し付けた)
お、また俯いちゃった。
「朱音さ。なんであの時、僕が怒ったら分かる?」
「わかり、ません……」
学校指定のセーターに身を包んだ朱音の、うなだれた首筋を見る。
――綺麗。
「泣きそうだったんだよね」
「へ?」
「泣きそう、だったんだよね」
「ぇ、と」
「なんかさぁ、そしたらさぁ……なんでこの子は泣きそうなのに必死に俺の機嫌、取ってんのかなって……」
「ぇ、はしたないですね。私」
「はしたない?どこが」
「ご機嫌取りなんて飼い猫みたい。捨てられないように必死な」
「いいじゃない」
あ、口から零れた言葉は修正できない。
きょとんを通り越して、は?の域だ。
「な、にがですか?」
「俺は、君に飼われてもいい。全然オッケー」
「!?」
あ、可笑しいこと言っちゃった。
(はしたない、と言ってしまった)
「朱音。笑って」
「ひゃいっ。」
ああ、面白いな。
可愛らしい。可愛らしい。
俺の、俺だけの――猫。
「つまり、あれですよねっ。泣きたかったら泣けよこのゴミ虫ばかやろーってことですよね?」
「ちょ、はい――そういうことです。でも決して朱音はゴミ虫でもばかやろーでもありません、はい」
「ろくろぉせんぱい」
「人の名前はキチンと言おうね?」
「先輩……」
「(無視ですか)はいなんでしょー?」
「空が綺麗です」
「そうだねぇ」
「なんだかオレンジと空色が混じったような色です」
「ああ、境目みたいだ」
「空の境界……」
「それパクリになっちゃうから」
「六郎、一郎、次郎、三郎、四朗、五郎、六郎」
「ねぇ、ちょっと何?喧嘩売ってるの?もしかしなくても」
かみ合わない会話。
隣で彼女が寂しそうに笑った。
「六郎先輩がどの辺りで怒るか、探り中です」
なんて、可愛いことを言ってくれちゃってましたよ。
僕の彼女は。
今日は、いい日だなぁ。