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10月10・11・12日
ヨイトマケの綱ひく声す余剰の思想もたざる清く充ちしこゑ(田谷鋭)
田谷鋭の代表作であり、戦後短歌史を代表する有名な作品である。昨日、美輪明宏(旧・丸山明宏)氏の音楽会・愛にうかがつた。やはり戦後を代表する名曲「ヨイトマケの唄」に涙がとめどなくあふれた。「天には星、地には花、人には愛」美輪さんのお言葉である。
てふてふひらひら甍を越えた(種田山頭火)
東日本大震災から7ヶ月。そしてまた本日は私が愛唱する種田山頭火の忌日でもある。種田山頭火もまた苦悩の生涯を送つた人だつた。甍を越えたてふてふとは山頭火がつかの間感じた救済の象徴だつたのかもしれない。
寂寥はわがかたはらに来て坐る秋の手とさへいふべくなりて(川田俊子)
昨日は大震災から7ヶ月と山頭火の忌日が重なつてしまつたので、山頭火の句を中心にしたが、今日は川田俊子氏の秋の挽歌を据ゑてみた。俊子夫人は文豪川田順の未亡人であり、二人の世紀のロマンスは辻井喬氏の「虹の岬」に詳しく描かれてゐる。川田順を追悼して俊子夫人が詠まれた歌だが大震災7ヶ月を悼み、捧げる。