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10月4・5・6日
露ながら草葉の上は風に消えて涙にすがる袖の月かな(木下長簫子)
長簫子は秀吉の妻・高台院の兄の息子(甥)で播磨の国や若狭の国に領地を持つ大名であつたが和歌の歴史の方に大きい足跡を残した。草葉の上の露にうつつた月が消へ、涙に濡れた袖に月がうつると歌ふ。長簫子は細川幽斎や松永貞徳、小堀遠州などと文化を担つた。大河ドラマに出てこない英雄はたくさんゐる。
庭の虫はなきとまりぬる雨の夜の壁に音するきりぎりすかな(京極為兼)
今日は一日中雨が降りしきり、冷え込んだ。街を見てゐると学生は一気に冬服に更衣したやうだつた。最近は夜になると秋の虫のオオケストラを聴くことが出来たが、虫たちはだうなるだらうか?雨とともに秋は深まり、思ひも深まる。
陶器の白く光れる我が風呂に静かにつかる秋の夕暮れ(立原道造)
久しぶりに地元の温泉に入る。大垣は北陸に近く、寒冷なので、陶器の家風呂より、にぎやかな温泉の方がよろしい。とはいへ、今日は昨日とうつて変はつて少し汗が出るぐらゐだつた。秋晴れの空は爽やかに澄んでゐた。穏やかな季節が過ぎていく。