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9月25・26・27日
女にてまたも来む世ぞ生まれまし花もなつかし月もなつかし(山川登美子)
何故だらう?この歌は秋の歌と決まつてゐる訳ではない。しかし何故か秋になると口遊んでしまふ。山川登美子は「明星」の歌人だつたが夭逝した。そのはかなく、哀しくも美しい歌が秋といふ季節と響きあふのだらうか?秋の花も、秋の月も忘じがたく存じ候。
秋風や模様のちがふ皿二つ(原石鼎)
今日はおひさまが出ておらず、ちよつと冷え込んだ。季節は確実に進んでゐる。先日、古川美術館で絵画や工芸品を観たが、そんなものもしみじみとあはれを感じる秋である。原石鼎は出雲の人で陶芸などに幼少から親しんでゐたのだらう。
曼珠沙華一むら燃えて秋陽強しそこ過ぎてゐる静かなる径(木下利玄)
今日は昨日とうつてかわつて、朝から晴れて気温が高い。私は布団を干したり、シーツを洗つたりしてゐる。掲出歌を詠んだ木下利玄は子爵。豊臣秀吉の妻・高台院の子孫は江戸・近代と大名・華族として残つた。木下利玄は東大国文で白樺派としても活躍した。