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9月16・17・18日
生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉(夏目漱石)
大震災から半年、合衆国のテロ戦争から十年の時が流れた。しかし私たちの皆が懸命に毎日を生きてゐる。それが復興であらうと思ふ。不思議に生き延びて仰ぐ今年の秋の空の高さと蒼さよ。私も生徒たちと生きていく。
いなびかり北よりすれば北を見る(橋本多佳子)
また台風が近づいてゐるらしい。雨や雷が激しい。しかしかへつて残暑がおさまり、少し眠つて体を休める。ここのところの残暑で疲れてゐた。残暑も困るし、台風も困る。なかなかむつかしい世の中である。
まなざしのおちゆく彼方ひらひらと蝶になりゆく母のまぼろし(寺山修司)
寺山修司・作、蜷川幸雄・演出、大竹しのぶ・主演「身毒丸」愛知県芸術劇場で観賞。能「弱法師」をオペラ、ミユウジカル風に味つけしながら、日本の家族、そして母への愛を描いた傑作である。古典を知り尽くし、学び尽くして美事に崩して、新しいものを生み出してゐる。感嘆を禁じ得ない。