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9月1・2・3日
かたはらに秋草の花語るらくほろびしものはなつかしきかな(若山牧水)
9月になつた。大震災から半年近く経つた。ほろびたものは大きく、なつかしい。そんな喪失感を抱える秋が来る。しかし同時に再生と実りを感じる秋でもある。復興を通じて大震災前より魅力のある国を作つていきたい。掲出歌には過ぎ去つた恋愛への想ひも滴らせてあり、そこが心を打つ。
旅の世にまた旅寝して草枕夢のうちにも夢を見るかな(慈鎮和尚)
台風が来た。名古屋に仕事のためにやつて来たが鉄道のダイヤが乱れ、大垣に帰れない。名古屋のホテルに宿泊。旅の世の中でまた旅寝をする。夢の世の中でまた夢を見る。明日は帰れるだらうか?
草まくら旅のやどりの露けくばはらふばかりの風も吹かなむ(藤原道長)
結局、今日も春日井のホテルに宿泊。かへつて非日常をささやかに楽しむが家に帰れない不安もある。しかし大震災の被災者の方は私よりずつと大きい苦難を味わつてらつしやる訳である。一の人、藤原道長は旅の夜、涙が流れても風が吹き飛ばしてくれるよと歌つた。明日吹く風を待つて眠る。