45/108
8月13・14・15日
流燈やひとつにはかにさかのぼる(飯田蛇忽)
お盆。川に灯籠を流し、亡き人の魂を天界におくる。それが一つ急にさかのぼつたといふ。感受性の強い人、文学が読める人なら、この一句の怖ろしさと悲しさに全身が粟立つであらう。蛇忽はよく死を主題に句を作つた。
中国に兵なりし日の五カ年をしみじみと思ふ戦争は悪だ(宮柊二)
第四句までおだやかに流れるリズムが最後、強い断定に変はる。その力強さの前では机上の空論はむなしく思える。宮柊二は実際、第二次大戦に送り出された。明日、終戦(敗戦)記念日。戦争は悪だといふ思ひを忘れてはならない。
山かげを立ちのぼりゆく夕煙わが日の本のくらしなりけり(保田與重郎)
本日は66回めの終戦(敗戦)記念日。そして大震災以後初のお盆をムシムシする中で過ごしてゐる。保田與重郎は第二次大戦前から戦中、戦後にかけて日本浪漫派を結成し、日本の伝統美と古典を追究した。戦争によりブレることなく、戦後の知識人に絶大な支持をされた。私たちも夏を、そして大震災以後の日本を生き抜いていきたい。