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8月7・8・9日
夏衣きつつなれにし身なれども別るる秋の程ぞもの憂き(伊達政宗)
夏の衣のやうに慣れ親しんだそなたと別れる秋は憂はしい。伊達政宗が恋人に送つた歌であり、別れは永遠の別れであつた。乱世の英雄は和歌や漢詩に通じた愛の英雄でもあつた。明日は立秋である。
露草や秋のまんまもなつかしき(泉鏡花)
立秋。掲出句は番町の先生、泉鏡花の手帳から死後見つかつた絶唱である。秋のまんまとは蓼の花のこと。立秋のころは暦は秋といつても一年で最も暑い時期である。しかし陽射しや風はだんだんと秋になり、私たちに実りや恵みをもたらす。
崩れたる石塀の下、五指ひらきゐし少年よ。しやうがないことか(竹山広)
竹山広先生は長崎原爆の被害を受けられた被爆歌人であつた。「しやうがなかつた」と暴言を吐いた政治家(といふに値しない)がいたが、原爆の被害や大震災の被害をしやうがなかつたと思つてはいけない。決して忘れることなく戒めとして、国の再建をすべきである。