7月28・29・30・31日
やがてはや国おさまりて民安く養ふ寺も立ちぞ帰らん(足利義政)
真夏、非力無才の私も忙しく働いてゐる。一人一人がさうやつて頑張ることが大震災からの復旧になるのだらうか。応仁の乱の時の将軍も国の平和を願つてこんな歌を詠んでゐた。国よ早くおさまれ。
時により過ぐれば民の嘆きなり八大龍王雨やめたまへ(源実朝)
新潟から福島にかけ歴史的豪雨が襲つてゐる。大震災の傷痕も癒えぬのに豪雨やエネルギー危機。源実朝のスケールの大きさは民のために神に語りかけるといふ桁外れのものであつた。今、そこまで純粋で器の大きな政治家がゐない。
天地のうちに一人の我ありと夢みしころの若かりしかな(尾崎行雄)
日本近代政治の父・尾崎行雄は掲出歌のやうな作品を残した文人であつた。今の政治家にそれだけの教養や知性があるのか考へるとゾオツとする。それはともかく内容も言葉も素晴らしい歌である。尾崎行雄はまさしくかけがへのない一人であつた。
我が若き思ひのすべて街を往く君を包みて夕霧となれ(加太こうじ)
若い生徒が恋心に悩んでゐる。モテすぎて彼女と他の女の子との間で揺れてゐる。ぜいたくな悩みだが、本人はちよつとアンニユイ。夕霧が包みこむのは一人ではなかつたのかもしれない。若さの輝きと影である。