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7月25・26・27日
いちにちをふりゐし雨の夜に入りてもやまずやみがたく人思ふなり(藤井常世)
今年は去年に比べると雨が多いやうである。暑さは少し和らぐが、また別の水害の心配も出てきて、とかくむつかしい世の中である。掲出歌はその雨のやうな恋心を歌ふ。「やみがたく」といふところまでがいはゆる序詞である。
数ならで心に身をば任せねど身に従ふは心なりけり(紫式部)
私は取るに足りないものだから心の欲望のままには生きられない。けれどこの現実の身に合はせて変はつていくのが心なのだ。原稿用紙何千枚もの人類の遺産を書いた女は当然、その精髄を一首の歌でも表してゐる。絶唱である。この歌を見逃さず「千載集」に選入させた俊成もすごい。
雨に弾く一途な心連弾のバッハ爆発寸前の恋(福島泰樹)
夕方、ピアノリサイタルに行く前、伏見のオウプンカフエでオランダ風クレエプの夕食。そうしたら滝のやうな夕立とものすごい雷。店の奥に逃げ込んだ。リサイタルの時間までには雨は上がつた。小林愛実さんのリサイタルはバツハではなくシヨパンだつた。15歳の少女、今後に期待。