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7月7・8・9日
恋ひ恋ひて逢ふ夜は今宵天の川霧立ちわたり明けずもあらなむ(詠み人しらず)
恋する気持ちをたかぶらせた彦星と織り姫様が逢ふ今日は七夕様。その夜、天の川に霧が渡つて欲しい。夜が明けないやうに。二人が別れなくてすみますやうに。古代人の願いは優しくロマンテイツクだつた。
なかなかに人にあらずば酒壺になりにてしかも酒に染みなむ(大伴旅人)
金曜日の夜、先輩の先生に誘はれ、居酒屋さんに行く。私には未知のドキドキする世界である。古代人で酒を愛し、酒を歌つた変わり種は大伴旅人だつた。旅人の歌にはほんのり悲しみがある。かえつて人でなければ酒壺になつて酒でいつぱいになるのだ、と。
ずいずいと悲しみくれば一匹のトンボのように本屋に入る(安藤美保)
悲しみがずいずい来ると本屋に入るとは本好きなのでもあり、現実逃避でもあるのだらう。作者自体、24歳で登山中、崖から転落して亡くなられた。さういふ悲しみを思ふ時、私もトンボのやうに本屋に入りたくなるのである。