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6月19・20・21日
どう切っても西瓜は三角にしか切れぬあと何回ぐらいの家族だろうか(永田和宏)
昨年、癌で亡くなられた巨匠河野裕子先生の夫で、京大教授でもあつた永田和宏氏の歌である。西瓜を食べる家族の愛情の風景にもいつか終はりが来る。しかしだからこそその日常が尊い。今日は父の日。河野裕子先生の辞世の歌を記しておく。「手をのべてあなたとあなたにふれたきに息が足りないこの世の息が」
涙川身も浮きぬべき寝覚めかなはかなき夢のなごりばかりに(寂蓮)
東日本大震災のダメエジもまだ癒えてゐないのに、九州は大雨の被害が出てゐるやうである。雨の中、人々に思ひを馳せ、無事をお祈りする。掲出歌は恋の涙で体が流されると歌ふが、涙は恋ゆゑとは限らない。雨よ早く止むがよい。
紫陽花やはなだにかはる昨日今日(正岡子規)
「はなだ」とは青色のことである。紫陽花も、萼紫陽花も美事にはなだ色に咲いてゐる。雨の中、美しく。掲出句は正岡子規の作品の中でも最も有名な作品の一つである。