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6月4・5・6日
苦しきは折りたく柴の夕煙憂き身とともに立ちや消えまし(鉢かづき)
鉢かづき姫は御伽草子の有名な話。頭から鉢がとれなくなつてしまつた姫がさまよいながら最後には貴公子に愛される。これも日本のシンデレラストオリイである。しかし途中姫はお風呂番になり掲出歌を詠んだ。私たちの現在の苦しみも必ず救済される。
面白きこともなき世を面白く住みなすものは心なりけり(高杉晋作)
幕末の英雄高杉晋作の辞世の歌である。高杉晋作には長州の美男の血が流れてゐた。かすかにおかしみを感じる歌である。私たちも心の持ちやう。丸い豆腐も切りよで四角である。希望を持つて行きたい。
家もなく妻なく子なく版木なく金もなけれど死にたくもなし(林子平)
林子平は優れた学者だつたが江戸幕府に弾圧され、不遇であつた。それでも死にたくないのだよ、といふつぶやきはフモウル(ユウモア)を感じさせるが、この笑いには涙が一滴したたらせてある。