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5月13・14・15日
我が歌は拙かれども我の歌、他人ならぬこの我の歌(中島敦)
空がやつと晴れ渡つた。生徒は中島敦の「山月記」を勉強してゐる。ひ弱な感じの写真が有名だが、掲出歌のやうに力強い歌も詠んでゐる。中島敦は浪漫を求める情熱を隠し持ってゐた。だから傑作を残せたのだらう。
青林檎与えしことを唯一の積極として別れ来にけり(河野裕子)
爽やかな休日。美術館を休憩時間に廻る。昨年亡くなられた河野裕子先生の若い時の傑作が掲出歌である。かういふシヤイな子は昔も今もいるだらう。そして私はさういふ子が何となく好きである。
ためらいもなく花季となる黄薔薇何を怖れつつ我は生き来し(尾崎左永子)
美輪明宏さんがエデイツト・ピアフの生涯を演じる「愛の讃歌」を拝見した。感動で涙がとめどなくあふれる。愛の力にふれ、私も活性化された気がする。大震災以来、何を怖れてきたのだらう。もつと力強く生きる。さう思った。愛を信じて生きるのだ。