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3月19・20・21日
さびしさと春の寒さとあるばかり(上村占魚)
昨日、天気予報は外れ、雨まじり、ひやりとした気候だつた。今日も寒い一日になるらしい。春に寒さが戻ることを春寒、余寒、冴え返るなどと表現する。病弱だつた夏目漱石は「冴え返る頃をお厭ひなさるべし」と詠んでゐる。皆さまもお体に気をつけて。
春愁や雲に没日のはなやぎて(原コウ子)
矛盾するやうだが、春は心わきたつ、華麗な季節であると同時に春愁といふ言葉もある。一年間、さまざまな愁ひは絶えない。私もいろいろ思ひわずらつてゐる。しかし、仕事先で美事な紅梅を見た。コブシや木蓮が咲き、次に桜が咲く。
義仲寺の水のにごれる彼岸かな(深見けん二)
昨日が春分。今は彼岸である。暑さ寒さも彼岸まで、と言ふが今年は寒さがなかなかなくならない厳しい年である。ところで、俳句の巨匠芭蕉は木曾義仲が好きだつた。そのためか義仲や義仲寺をあしらつた俳句には秀作が多い。掲出句もその一つ。