毒と不死鳥の炎 前編
なんとか書き終えたので投稿です
「っはぁ...はぁ...」
男は、森を歩いていた。
「ちくしょう...なんで、あんなのがここに...」
足を踏み出す度に、体中についた傷から、赤黒い雫が滴り落ちる。
「と、とにかく...逃げねぇと」
そこで、男はあるものを見た。
パチパチと弾ける炎と、二つの人影。
おそらく、同じ冒険者だろう。
男は軋む体に鞭打って、希望の光へと向かって行った。
「この森、やけに動物少ないな」
「そう?今のところ順調じゃない?」
私は野草の肉巻きを頬張りながら、メテオの疑いに適当に応える。
フラワーディアーを仕留めた後、私達は順調に狩りを進めていた。
空を飛んでいた鳥や、大きなイノシシなど、少ないとは言えない量の動物を手に入れているため、メテオの気の所為だろうと深く考えていないのである。
「いや、いるにはいるけど...」
それでも、メテオは納得しきれないようだ。
「あんまり悩んでると、獲物も逃げてっちゃうよ」
私はメテオを真似、軽い調子で言ってみる。
するとようやく、メテオは「やれやれ」とでも言うように息を吐いた。
その時──
「──ーい!誰かそこにいるのか!?」
切羽詰まったような、男の声が聞こえてきた。
私は咄嗟にメテオを見るが、彼は首を振って自分でないと示す。
数秒後、草をかき分け、一人の男が、私達の元へと歩いてきた。
紅色の短い髪に、筋肉が躍動する体躯。しかし全身に傷を負っており、どことなく息も途切れ途切れだ。
「ここは危ない!早く逃げたほうがいい!」
「...え、どういうこと?...ちょっと!」
男は最後にそう言い残すと、その場に倒れてしまった。
「メテオ!とりあえず傷の手当を手伝って!」
頭から血を流しているのを見て、私はのんびりしている暇はないと判断。メテオに指示を下し、私自身は辺りに生えている薬草を集め始める。
「...何やってるの!?早く薬草を──」
しかしメテオはその場にずっと座ったまま。
流石に見かねた私は、メテオに苛立ちをぶつけるが──
「...あぁ、その必要はないよ」
メテオはきっぱりとそう言いきった。
「え、でも...」
「いいから、ちょっとどいて」
戸惑う私を押しのけ、メテオは男のそばにしゃがみ込む。
そして、右手に炎を灯した。
その色は前に見た灼熱の赤とは打って変わり、静かに燃える蒼色をしている。
メテオはその炎を、迷いなく傷ついた体に押し当てる。
瞬間──男の体が、まばゆい緋色の炎に包まれた。
「えぇぇえ!?待って、火葬するには早──」
「黙ってて」
珍しく反論を許さない強い口調で、私の焦りを一蹴する。
よく見るとメテオの額には、じんわりと汗が滲んでいた。
「おそらく、この人は毒を打ち込まれてる。だから上っ面だけの治療じゃ、意味がない」
片言ながらも、メテオは私に説明をしてくれた。
けど毒なら、薬草でも治せるんじゃないの?
「残念だけど、この毒は薬草ごときじゃ治せない。一回僕も喰らったことがある」
え、じゃあ、今やってるこれは...?
「あつっ...これは別。説明は後で」
メテオはそう言うと、黙って処置を続けた。
蒼い炎が欠損した部位へと燃え移り、内側から生やしたかのように、元通りに再生させる。
その光景には、神秘的に思える何かがあった。
数十分ほどそうしていただろうか。
男の体から出ていた炎が収まり、メテオの炎も鎮まる。
男はあれだけ傷だらけだったのが嘘のように、綺麗に治されていた。
────結局、あなた何したの?」
私はしばらく男が起きないことを確認すると、先程やったことについて、メテオに問い詰めることにした。
「話さなきゃ駄目?」
「当たり前でしょ。今まではなんとか流せたけど、あんなの、聞いたことない」
あの炎は、文字通り肉体を再生させている。
魔術であれ、種族の特性であれ、そんな力が存在するとは思えない。
「......分かった、話すよ」
私の疑念を無視できなかったのか、メテオはかなり長い時間黙っていたが、重々しく話し始めた。
「僕に宿っている力、まず一つ目は僕の種族である月兎。冷気を操る力と、通常じゃ考えられない跳躍力を得られるんだ」
「...でもそれじゃ、炎はどうやって?」
「慌てないで。そして、二つ目の力は...不死鳥」
不死鳥。またの名を、フェニックス。
神話や伝説では、生命と炎を司る幻獣とされているもの。
…本当に、実在したの。
「まぁ、この力はあまり馴染んでなくて、使うと体が焼けちゃうんだけど...不死鳥は焼き尽くす炎とは別に、「宿る属性を増殖させ欠損を再生させる」っていう蒼炎が使えてね。さっきのはそれ」
謎が解け、また一つ増える。
普通じゃないとは思ってたけど、とんでもない力を持ってるなら、そりゃそうか。
「けどそれ、危なくないの?」
「もちろん、代償がないわけじゃない。再生させた対象は、魔力が結構消費されちゃうしね」
「そういうことじゃないんだけど...」
「いやー、この人の魔力が炎で良かったよ。消費も少なく済んだし」
私はあまりの規格外さに、一周回って呆れてきた。
月兎と不死鳥という幻獣の力を持つ、メテオ。
どこかズレた感覚は、そこから来ているのだろうか。
私がそう考えていた時。
寝ていた男の手が、ぴくっと動いた。
エイプリールフールでしたがネタが思いつきませんでした...
アイデアって気まぐれだぁ...




