初めての狩りに花粉を添えて
ま、間に合わなかった...
とりあえず更新です。
「この辺、町すらないんだけど」
「冷静に判断してないで、お姫様抱っこやめてくれない?」
木々に足をかけ、メテオはまた跳躍した。
対して私は両手で抱えられており、顔を赤らめている。
結局、帝国の森からは出られたものの、その先にも森が続いていた。
流石に動物はちらちらと見かけているが、人はまったく見かけない。
「どうする?この調子だと、今夜はご飯抜きの野宿になりそうだよ」
「そ、そうね...とりあえず、鹿とか狩って食べるしかないかな」
「あーあ、表裏一界が使えれば、こんなことにならなかったのに...降りるよ」
内臓が持ち上がるような浮遊感のあと、たんっと軽い音を立て、私達二人は地面に降り立った。
いそいそと私はメテオの腕から逃れ、自分の足で立ち上がる。
「じゃ、メテオ任せた」
「嘘でしょ丸投げ?」
「だって、狩りとかしたことないもん」
母上や父上と一緒に行ったことはあるけど...小さい頃の話だし、私自身は狩りをしなかったしね。
「まぁ良いけど...焔雄の英剣」
メテオは渋々承諾すると、ワイバーンを倒す時に使ったあの剣を出現させた。
「...それ、どうやって出してるの?あの...りばーすなんちゃらってやつは使えないんでしょ?」
「これは僕自身の力だよ。前に溶岩だらけのとこに行った時、偶然引っこ抜いたやつ」
「へぇ...」
私達がそんな他愛もない会話をしていると、草がこすれ合う音が聞こえた。
「お、なんかいるっぽいね。じゃあ狩りに行くけど、ついてくる?」
「一応、ついてく」
「分かった。あ、怖くなったら叫んでいいからね。おちょくるから」
「一言多い!行くよ!」
もう...
ずんずんと前を進む私を、メテオは口笛を吹きながらのんびりと追ってくる。
しばらくすると、木が生えていない開けた場所に出た。
花が咲き乱れており、森と言うよりも花畑と呼ぶのがふさわしい。
「わぁ、綺麗...」
「へー、細かいな」
各々、思い思いの反応を示す。
そして──
ガサッ。
──私達がその光景に見とれていると、1頭の鹿が現れた。
角はないが、毛皮は緑色だし、ところどころ花が生えている。
「フラワーディアー...珍しい」
「なにそれ」
「知らないの?森に住む魔物で、果実っぽい味の肉が特徴的なの。基本、どんな料理にしても美味しいと思う」
「へー...で、倒すの?」
メテオはそう聞いてくる。
相変わらず、無遠慮と言うかなんというか...
「食べ物があるなら、私は迷わない。やっちゃって」
「かっこつけてるけどすごいカッコ悪いよ?」
「うるさい!」
また私はかっとなるが、メテオは気にせずに切っ先を鹿に向けた。
「普段ならあんまり動物は殺さないけど...事情が事情だ。ごめんね」
直後、あの時のように、無数の焔色の剣が現れる。
その剣達はメテオの意思に従い、フラワーディアーへとまっすぐに飛んでいった。
(...あれ、でも確か、フラワーディアーって...)
ふと、私はあることを思い出す。
メテオの放った剣が、フラワーディアーに当たる直前。
(あ、思い出した。確か...死の瞬間に、吸い込むと麻痺する花粉をばら撒くんだっけ)
それに気づいた瞬間。
剣が、胴体に突き刺さった。
「あ」
思わず、私は声に出してしまう。
さ、流石にこれは私のせいじゃ...
ボフン!!
滅多刺しにされたフラワーディアーの花から、黄色い粉が吹き出る。
あらかじめ知っていた私は口と鼻を覆うが、知らないメテオは特に何をするでもなく、もろに花粉を喰らう。
「メテオ!」
咄嗟に、私は叫び声を上げる。
もうもうと黄色い煙が立ち込め、辺りが見えなくなっていく。
煙が晴れた時、そこには...
変わりない様子で、メテオが立っていた。
「...えぇ?」
「うーん、これぴりぴりするなぁ...」
え、どういうこと?
避けてなかったよね??
「いやー、備えあれば憂い無しってやつだね」
...いや、違う。
よく見るとメテオの体が、不自然にきらきらと光っている。
まさか、花粉を凍らせて防いだ...?
「ん?どうしたの、そんな化物を見たような顔して」
「...いや、なんでもない」
やっぱりこいつ、普通じゃない...
「それはそうと、どうやって食べる?焼くくらいなら出来るけど」
しかしメテオは気にせずに、私に指示を仰ぐ。
ほんと、メテオは敵に回したくないよ。
「じゃあ、枯れ枝を集めて、焚き火で...」
数分後、私とメテオは周りに落ちていた枯れ枝から焚き火を作り、メテオが炎を出して着火した。
思いの外メテオは料理が上手く、出されたものはどれも美味しい。
「メテオって料理出来るんだ、意外」
「そんな大層なものじゃないよ。暇な時に身に着けただけ」
ひ、暇な時かぁ...
確かに、こいつってどこかのんびりしてるし、時間があれば色々やるのかな。
ちょっと見直した。
「...ちなみに、今何歳なの?」
「ん?んー...ざっと5万歳くらい?」
「へぇ...は!?」
「精神年齢の話なら、100歳だと思う」
「どっちも訳分かんないんだけど!?」
訂正、やっぱりこいつ規格外だ。
その後も私はメテオに感情を爆発させるが、彼はやはり気にせずに食事をしていた。
初めての狩りは、従者の謎が増えただけだった。
花粉はどの世界でも嫌われるもの。
ちなみに筆者は花粉症ではありません。




