メテオside:大乱闘、そして、気づき
遅れて更新。おそらく今日中にあと2話くらい投稿します。
(まぁ多分、僕は干渉できないと思うんだけど)
剣を構えつつも、僕はそんなことを思った。
異能を持ち、世界を創成出来る執筆者といえど、神ではない。
世界に入るのにも色々とルールがある。
その中に、例外は存在するが、「執筆者は他人の書いた世界に干渉することが出来ない」という物がある。
(どうしようかな、ルリオンはまだ戦える段階じゃないはずだし)
おそらく僕が剣を振っても、ワイバーンに傷をつけられないどころか、認識すらされないだろう。
物語の「読者」として世界に入るというのは、そういうものだ。
(困ったな、このままだと逃げるしか...って、ん?)
その時、僕は気付いた。
ワイバーン達の視線がルリオンでなく、剣を構えた僕に向いていることに。
「...おかしいとは思ってたけど、そういうことか」
僕は小さく、白い息を吐いた。
「少し、試させてもらおう」
ギィィィァァァァァアアアアッッ!!!!
先頭のワイバーンが、雄叫びを上げ突っ込んでくる。
大気がビリビリと震え、草木がなぎ倒されていく。
「う、うるさ...耳に攻撃とか、兎への対処はバッチリってこと?」
しかし僕は怯えもせず、一歩前に踏み出す。
「メ、メテオ!?何やって────」
後ろの方でルリオンの声が聞こえるが、とうに意識の外に投げ出した。
迫る顎。
襲い来る一撃必殺。
だけど────
「遅い」
横に一閃。
僕の一撃は、ワイバーンの首を正確に斬り落とした。
傷口から氷が広がっていき、やがて全身が氷に置き換わる。
制御を失った氷の彫刻は、自然落下によって砕け散った。
「...え」
ルリオンの間の抜けた声が聞こえる。
────斬れた。
確かに、手応えがあった。
「やっぱりか」
僕は氷の剣の切っ先を、今になって怖気づいたワイバーン達に向ける。
直後─────
無数の青白い剣と焔色の剣が、固まっていた群れを貫いた。
断末魔すら起こらず、穴だらけになった体が、空中でバラバラになる。
「......」
ルリオンの声も、同時に聞こえなくなった。
数十。
それだけいたはずの群れが──
「こんなものかな」
──僅か数秒にして、一匹の兎に壊滅させられた。
「ありゃ、まだ残ってるな」
僕は視線を上げ、後方にいた数体を見据える。
様子を見ていたそれらは、一瞬にして群れのほとんどを消し飛ばした僕を警戒しているようだ。
(んー、逃げてくれると助かるんだけど...)
ほんの一瞬、静寂が訪れる。
────ギィァァアアッッ!!!
先に動いたのは、ワイバーンの方だった。
「まぁ、そうくるよね」
僕は苦笑いを浮かべ、両手に持った剣を──放り投げる。
ワイバーンの注意が僕から、その剣に向けられるのは必然のことだろう。
「氷炎幻獣──」
だけどそっちに気を取られたら、君たちの負けだよ。
僕は左手に冷気、右手に炎を纏わせ、目を閉じた。
集中力が限界まで研ぎ澄まされ、冷気と炎が圧縮していく。
「──爆!」
解放された冷気と炎は衝突し、水蒸気爆発を起こす。
僕への被害を度外視した、正真正銘の「自爆技」。
直後、爆音が轟いた。
衝撃が、辺り一帯を吹き飛ばす。
肌を焼く熱風と、骨を凍らせるような冷気。
本来なら両立するはずのない二つが、この場においてのみ同時に存在していた。
数秒後、風がやみ、白い煙が晴れていく。
パラ...パラ...
何かが降ってくる。
それは──木っ端微塵に砕かれた、なにかの肉片だった。
さっきまで生きていたワイバーンは跡形もなく消し飛び、地面はえぐり取られたようにボコボコになっている。
「あちち...やっぱり、自爆は慣れないなぁ」
その中心に、傷を負うこと無く、僕は立っていた。
「よし、これで大丈夫」
何事もなかったように、僕が振り返ると。
「......」
後ろで見ていたルリオンは、その光景に絶句していた。
「あれ、どうしたの?」
「どうしたの、じゃないでしょ...」
絞り出すような声。
「い、今の...何...」
「え、見たまんまだと思うけど」
「分かるわけないでしょ!!!!」
ようやく、彼女は感情を爆発させる。
「あんな魔術、見たことも聞いたことも...」
「そう?似たようなの、結構見たけど」
「どこでよ!!」
...おっと、口が滑った。
「まぁいいや」
僕は強引に話をぶった切る。
「良くないわよ!」
ルリオンは不平をたれるが、僕は気にせずに考え事をしていた。
(今ので確定だ...僕は、この世界の登場キャラクターとして描写されてる)
本来は、あり得ないこと。
誰がこの本を読むか、普通は予測出来るもんじゃない。
ましてやその読者を、物語の登場人物として扱うなんて...
「...ね、ルリオン」
「なによ」
まだ混乱して起こっている彼女に、僕は軽く言う。
「とりあえず、危ないから移動しよっか」
「その原因、あなたなんだけど」
「うん、知ってる」
悪びれもせず頷くと、ルリオンは頭を抱えた。
「...はぁ、もういい...」
この物語には、異常が多すぎる。
未完成だったり、僕がキャラクターとして書かれていたり。
けどとりあえず僕は、ルリオンについていくことにした。
だって、面白そうだから。
速報:超重要な設定、4話目にして開示される。
メテオはもともと世界を書く「作者」ですが、今は「読者」。だから、普通は物語に干渉できないんですね。
大丈夫です。まだとっておきが大量にありますので(にっこりえがお)。




