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銀河の時空管理者 ~神と名乗る時空竜と一つになりまして~  作者: 十本スイ


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7/7

 ――数日後。


 今日も今日とて、授業が終わった後に図書室で読書を満喫していた。先日の休日には、ほぼ一日中、がっつり訓練していたので、今日は休みということで本に心身を委ねることにしたのである。


(あぁ、やっぱり本は良いな。知識欲が満たされるし、何より幅広いジャンルがあって面白いものが多い。あ、そうだな、あっちの世界にも何冊か本を持ち込んでもいいかもしれん)


 あっちの世界とは、鍛錬に活用している星のことだ。あそこならそれこそ誰にも邪魔されず縛られずに趣味に没頭することができる。


(ふむ、本気で移住ってのも考えてもいいかもな。発電とかも何とかしようと思えばできるし。それに最悪物資がなくなっても、すぐに地球に戻ってくれば問題も……)


 そうして日雲が今後のビジョンを、読書しながら描いていた時のことだ。

 何か妙な気配が周囲を覆ったことに気づく。同時に図書室の明かりが落とされ停電状態になる。


(……おかしいな。雷も鳴ってないし、それにこの違和感……)


 本を机に置いて周りを確認する。放課後に図書室を利用する者は、そう多くないが確かにいる。今日も自分以外にちらほらと数人いたはずだし、何より図書委員か先生が常駐している決まりだ。


(……誰もいない?)


 まるで突如として人気が消失したかのような感覚だった。

 どういうことかと怪訝に思いながら、不意に窓の外へと目をやる。そこでさらなる異常さに気づいた。


「……夜だと?」


 時間はまだ四時過ぎだったはず。もうすぐ夏を迎えるし、冬でも日はまだ落ちない。それにもかかわらず、外は夜の帳が落ちているかのよう。

 明らかに不可思議な現象が起きている。しかしここ最近、何度かファンタジーな経験をしていたためか、日雲にはそれほどの驚きは無かった。


(部活をしてるはずの生徒たちの声も聞こえてこない。外に出てみるか)


 そう判断し図書室を出てギョッとする。

 扉を開けたら長い廊下が広がっている……はずだったのだが、どういうわけか半壊していた。言っている意味が分からないかもしれないが、窓側から何かに食い破られたような大穴があったのだ。


(マジかよ……ていうか、これだけの騒ぎに誰の声も聞こえないのはやっぱり不自然過ぎる。誰もいないのか?)


 まるでどこぞの異界にでも引きずり込まれたようだ。


「いいや、案外そうなのかもな」


 天を仰ぐと、半壊して露わになった屋上の先に広がる空が見渡せる。そしてそこでハッキリと視認した。夜と思われていた認識が覆ったことを。


「……空が紫色だな」


 異常な空色。天一面が濃い紫に染め上げられており、日の光が一切地上へと届いていないため周囲は闇に染まっていたのだ。

 ただ完全な暗闇ではなく、蛍のような淡い光の粒があちこちに浮遊している。見た感じ害は感じられず、それらが発光しているお蔭で、僅かに明るさを持ち合わせていた。


 一体何がどうなってこうなっているのかまったくもって不明である……が、日雲にとってどうでもいい現象の一つでもあった。


「まあ別にいいか。俺はさっさと家に戻って――」


 どこにいようがすぐに自宅に転移し帰宅しようとした矢先、今いる校舎の真向かいにある別の校舎が弾けた。


(ったく、今度は何だ?)


 目の前の空間を固定し壁化。それでこちらに飛んできた破片を防いだ。

 校舎が決壊したことで起こった土埃から、巨大なナニカが姿を見せた。

 その異形な存在に、思わず瞠目する。


「……黒いワニ?」


 一見して答えを導くのならワニだった。いや、正確にいえば全身を闇色に染めたワニのような姿をしたナニカ。校舎ほどに大きなソイツは、見ればその口で校舎を噛み砕いていた。


 すると別方向からも何かの気配を感じた直後、そこから光の球体が放たれ、それがワニの頭部に直撃した。攻撃を受けたワニだったが、それで倒れるとまではいかず、ダメージは負いつつも殺意を漲らせた赤い瞳で空を睨みつける。


 その視線の先には、一つの人影が浮かんでいた。

 全身に煌びやかな衣装を纏い、箒を手にした少女の姿。


(あれ? アイツって確か……)


 その少女を見て先日のことを思い出した。そうだ、深夜のコンビニ帰りに、自宅近くで遭遇した魔法少女。彼女だということに気づく。


(なるほど。そういやあのワニ、規模こそ違うが、あの時のタコに似てるな)


 魔法少女と戦っていた謎の異形。日雲にまで攻撃を仕掛けてきたので瞬殺してやったが、この事態が間違いなく異星人の仕業であることを察した。


(迷惑な連中だな。まあでも死人は……見当たらないが)


 そこから見える範囲にはいない。一応確認がてら感知空間を拡張して探索してみたが、やはりここには日雲たちだけ。ただ、感知空間を広げたからこそ理解できた。


(どうやらここは結界みたいなもんだな。力の質から、魔法少女が作り出してるみたいだが)


 結界は学校の敷地内ほどの広さ。そしてその中は無機質な空間となっていて生物の気配はない。現実とは切り離された異空間であり、ここでなら暴れても誰も被害は受けないということ。

 もっとも日雲が巻き込まれていることに少女たちは気づいていない様子だが。


(ざっと調べて分かったが、この結界では普通の人間は弾かれるみたいだな。俺が弾かれなかったのはイデアスの力のせいか)


 空間を管理する者としての耐性が働き、魔法少女の結界の力が通用しなかったのだ。

 なかなか面白い能力だ頷いていると、ワニが空に向けて大口を開き、そこからビームのようなものが放出された。向かう先は魔法少女。


「くっ! せっかく追っ手を振り切れたと思ったのにぃ!」


 魔法少女が、自身へと向かってきたビームを回避しながら叫んでいる。その声は日雲にも届いていた。


(追っ手? そういや前に会った時も追われてたとか言ってたような……)


 どうやらあの魔法少女とやらには明確な敵がいるらしく、命を狙われている感じだ。言葉通りに受け取るなら、地球に逃げ込んだのか迷い込んだのか知らないが、それでも逃げることが叶わず現状を迎えているみたいである。


「ああもう! このまま放っておくなんてできないし! そんなことしたらお師匠様にも怒られちゃうしぃぃぃ! うひゃあぁぁぁぁっ!?」


 嘆く魔法少女だったが、その隙をついてワニが飛び上がって、彼女を食わんと迫って来ていた。


「た、食べるのダメーッ!」


 ワニの口の中へと箒を向けた魔法少女。その箒の先端から眩い輝きが生まれ、そこから光の玉が射出された。どうも先ほどワニの頭部を襲ったものと同じエネルギーの塊。

 放たれた光の玉は、真っ直ぐワニの口内へと吸い込まれていき、そこで小規模ながらも爆発を引き起こし、ワニは口から煙を吐きながら地上へと落下していった。


「あ、あれ? た、倒しちゃ……った?」


 落下していくワニを見ていた魔法少女が、その視界に映り込んだものを見て愕然とした。何故ならワニが落下していく先の校舎の中に日雲の姿を捉えたからだ。


「う、嘘ぉっ!? 何で人がいるのぉっ!?」


 あの夜の時と同様に慌てふためく魔法少女を尻目に、日雲は溜息を吐きながら、落下してくるワニを見つめていた。


(何でこうも俺の活動範囲に厄介事が現れるんだ)


 できればこのまま見なかったことにして帰りたいが、放置すれば現実にもワニが被害を与える危険性が高い。そうなれば間違いないなく、現実の学校も目の前に広がっている光景へと姿を変えることだろう。


(まだ読み終わってない本もあるんだぞ)


 それに他の校舎はともかく、図書室だけは破壊させたくない。そこは日雲の憩いの場所となっており、これからも世話になると決めているのだから。

 それを邪魔する輩は排除しなければならない。


「というわけで、さっさとこの世界から消えてくれ」


 ワニに向けて、右手の人差し指を切るように動かす。それに呼応して、ワニの身体に一閃が走った。二つに分かたれたワニの身体は、それぞれ日雲のいる校舎を避ける感じで落下して地上に衝突する。


「……………………はへ?」


 露わになった空の上で一人浮かぶ魔法少女は、間抜けな表情と声を出して硬直していた。




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