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銀河の時空管理者 ~神と名乗る時空竜と一つになりまして~  作者: 十本スイ


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6/7

 日雲は、イデヲスとの邂逅を思い出して溜息を吐いていた。

 まったく想像だにしていなかったことが立て続けに起こった。自分の乗ったバスが事故に遭いかけ危うく死にかけるし、それを救ったのは神と名乗るバカでかいドラゴン。しかもそのドラゴンの目的が自分との統合だったというのだから驚天動地過ぎる。


 急激な変化は望んでいなかったのに、こうも連続して強烈な変化が起こるなんて誰が予想できただろうか。


 それでもその変化があったからこそ、自分の命は助かったし、誰もが羨むような〝力〟も得ることができたのだが。

 深夜飯を食べ終え寝転んでいた日雲は、改めて今日体験したことを思い起こす。


「あの魔法少女らしき奴とタコもどき、間違いなくイデヲスが言ってた異星人だよな。俺のことを見て〝原住民〟とか言ってたし」


 一応警戒はしていたが、明確な日付までは分かっていなかったので、いつ遭遇するかは不明だったのである。それが今日訪れたというわけだ。

 しかしよもや最初に出会った異星人が魔法少女だとは誰も思うまい。いや、そもそもアレは本当に魔法少女なのか。それにタコもどきは何なのか。


(確かあの魔法少女、タコもどきに対して〝ここまで追ってくるなんて〟って言ってたな)


 つまりあの二者は繋がりがあって、戦闘していたということは敵同士ということ。もっともそのうち一体というか、タコもどきは日雲がすでに倒してしまったが。

 家の近くで暴れられては困るし、何度も攻撃を仕掛けてきたので始末した。


(意外にあっさりだったな。もう少し手応えがあるかと思ったが)


 そのまま上半身を起こすと、テーブルの上にある空になったコンビニ弁当に意識を向ける。すると空箱が突如姿を消し、ゴミ箱の真上に現れ、そのまま落下した。


 これぞ――空間転移。任意の物体や物質を一瞬で別の空間に移動させることが可能だ。

 他にも空間を圧縮・膨張することもでき、歪曲させたり断絶して石でも鉄でも瞬時に真っ二つにすることも可能である。空間に対してあらゆる事象を引き起こすという反則極まりない力だ。


 この空間操作だけでも恐ろしいのに、日雲にはもう一つの力が備わっている。

 立とうとして膝がテーブルに当たり、ペットボトルが倒れてしまう。蓋をしていなかったので、中身が流れ出て床に落ちる。


「あーあ、やっちまった。まあ、問題ないけどな」


 ペットボトルに意識を集中させると、倒れたペットボトルがひとりでに起き上がり、流れ出ていた水すらもペットボトルの中へと戻っていく。それはまるで時が巻き戻ったかのように。

 いや、正真正銘時間を巻き戻したのである。これが二つ目の力である時間操作。


 時間と空間。その二つにおいて、自在に干渉し変動させることができる。


 故にイデヲスは『時空管理者』という肩書を背負っていた。そして現在、その肩書は日雲へと継承されており、イデヲスほどではないが、時空変動能力を扱うことが可能なのだ。


「改めて考えると、とんでもない能力だよな、これ」


 事実、この力があればできないことはほとんどない。どこかに移動するのも一瞬だし、時間停止だってお手の物。やろうと思えば自身の肉体年齢を巻き戻して若返ることだってできるのだ。多くの人間が欲するであろう不老長寿が、いとも簡単に成せてしまう。


 仮にこの能力が他人にバレたら、今後どうなるかは明らか。その恩恵に縋り利用しようとしてくるか、危険だと排除に動くか、あるいは……。

 とにかく厄介なトラブルに発展するだろうことは理解できる。だから本来なら秘匿し、必要な時だけにバレないように行使するべき。


 しかしそれは中途半端な力を所持している場合だ。ハッキリ言って、『時空管理者』の力は絶大としか言いようが無い。究極、理想、最強で最高の能力なのだ。それこそつけ入る隙など、力を持たない人間が相手なら皆無である。


 それに加えて、日雲には守るべきものもない。唯一の味方とも呼べる母も他界し、離婚した父はもちろん、親戚にも一切の繋がりなどないのだ。そんな連中に迷惑が掛かろうが知ったことではない。


 故にバレようが、世間に晒されて後ろ指を指されることになろうが、まったくといっていいほど問題がないのだ。だから多くのラノベ主人公にありがちな目立ちたくないムーブなんて不必要。

 力ずくで害を成してくるつもりなら軽く迎撃してやるし、姑息にも利用しようとしてきも、こちらにメリットがなければ無視するか強制的に排除するつもりだ。


 だからこそ先ほどの現場でも、力をまったく隠さなかった。困惑している様子の魔法少女を放置したのは、彼女よりも空腹を満たしたい欲求が強かっただけ。


(まあでも、まだまだイデヲスレベルには届かないんだよな)


 統合のお蔭で、イデヲスの知識や経験は身についているが、いかんせん人間の身体とドラゴンの身体では、力のコントロールが異なっているため完璧に扱えるまでには時間がかかる。もっとも現状でも、全力を出せば街一つを軽く滅ぼせるくらいにはできるが。


「んじゃ、腹も膨れたし、そろそろ行くか」


 次の瞬間、日雲の姿が一瞬にして消失し、現れた場所はというと、視界いっぱいに荒野が広がる場所だった。大小様々な岩石が点在している。

 驚くことなかれ、ここは地球ではない。しかし空を見上げれば太陽も見えるし、白い雲だって悠々と浮かんでいる。少し離れた場所には海や森があるのも調査済み。


 ――【名も無き惑星】。


 イデヲスの記憶にあった、彼が管理している宙域に存在する星の一つであり、地球に似た環境が広がっていた。

 ただ、地球と異なっているのは、この星には地球人のような人類が存在していないこと。また、動物のような種は生息しており、言うなれば人類が誕生する前の地球といったところか。


 何故このような星に来たかと言うと、ここでなら訓練ができると考えたからだ。


「昨日の続きだな。まずは……」


 遠目に点々と在る岩群に向けて、地面と平行に横一線を引くように人差し指を動かす。すると線をなぞるようにして空間に切れ目が走り、同時に切れ目にそって岩群もまた真っ二つになった。

 今度は縦に人差し指を動かすと、地面に真っ直ぐ切れ目が入る。岩もそうだが、地面に入った切れ目もまた、まるで抵抗なく寸断されたかのように美しい断面をしていた。それほど凄まじい切れ味だということ。


 それもそのはずだ。これは刃物で切ったわけではなく、空間そのものを断絶し区分け、あるいは分割したといった方が正しい認識かもしれない。故に物質に存在するありとあらゆる抵抗は無意味と化す。


「うん、射程距離は少しずつ伸びてるな」


 初めて訓練を始めた時と比べると徐々にだが伸びていた。


「でもまだ未熟だな」


 記憶の中のイデヲスなら、視界に映る場所はもちろん、把握できる空間内に存在するすべてのものに干渉し、能力を発揮することができていた。また一撃で星一つを寸断することも可能だったことを考えれば、その域まで達するには、どれほどの鍛錬が必要になるのか見当もつかない。


 実際のところ、あのイデヲスの巨体な身体だったからこその力だとも言える。ハッキリいってしまえば、人間と統合したことで弱体化したのは間違いないのだ。それでもこれだけの力を行使できるのは、さすが神の力と言えようが。


(イデヲスのレベルまで目指すのは途方もないのは理解してるが……)


 しかしながら日雲にとって、それは諦める理由にはならない。せっかくなのだから、ゲーマーである以上は、でき得ることならカンストレベルまで成長したいし、技術もコンプリートしたい。端的に言えば凝り性なのである。


 自分が納得できるまで、限界に達するまで極めたいのだ。これだけの経験ができる人生なんてもう二度とない。だからこそやり尽くしたと心から言えるまで突き詰めたい。それが針原日雲という人間の性質なのである。


「よし、なら次は――」


 右手だけを高々と挙げると、その先の空間が歪みながら収縮し始めた。それがしばらくすると、掌の上でテニスボールほどの少し灰色がかった球体になる。それを視線の先にある岩に向かって投げつけた。

 球体が岩に触れた瞬間、凄まじい破裂音を響き、岩が半ばから砕け散ったのである。


「……威力は今一つだけど、一応成功したな」


 今のは空間ごと空気を圧縮したもので、それを対象物に投げつけて一気に解放する。その時の衝撃は圧縮した空気量で変化するが、これがなかなか難しい。最初はイメージが掴めずに、圧縮したものを留めることすら困難だったが、空気量を調節することで、少しずつ上達するようになった。


 もっともイデヲスなら……とまあ、いちいち言わなくても規格外だっと言えば理解できるだろう。


 こんな感じで、毎日訓練の時間を設けている。やる度にレベルが上がっている実感があるので楽しい。それにどんどんできることも増えているし、今なら異世界の魔王が相手でも戦えそうだ。とはいっても別に戦闘マニアでもないので、面倒なことを率先してしたいとは思わないが。


(けど、イデヲスが言ってた異星人の件もあるしな。強くなっておくのに越したことはない)


 そう判断し、その後も二時間ほど訓練を続けたのであった。




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