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「俺の名前……ま、神ってことでいいか。それよりも魂の色が同じ……。その波長ってのが合えば何でも統合できるって認識でいいのか?」
「いいや、統合を実行できる力が必要だ。この力を持ってる奴ってのは稀でなぁ。俺でも数えるほどしか知らん」
何万年生きているらしい自称神が数えるほどだと言うのだから、それだけ稀少な能力なのだろう。
「……聞きたいことがあるんだが、何故そこまでして統合したいんだ? 神ってことは別に俺たち人間みたいに寿命とかもなさそうだし、その身形に比例して絶対に強い存在だろ? わざわざ統合する理由は何だ? しかも波長が合ってるとはいえ、アンタに比べたら明らかに弱者でしかない俺なんかと」
統合するメリットが必ずあるはずだ。そうでなくては矮小と評価する相手と一つになりたいなど思わない。人間で置き換えると、ミジンコとかの微生物と統合するようなものだ。どう考えても望んで行いたいとは到底思えない。
「そうだな。確かに俺ら神には明確な寿命ってものはないぜ。純粋な力という意味でも、神に勝る存在なんてそうはいない」
日雲はその言葉を聞いて、やはりと思うと同時に、
(俺ら……ね)
気になったワードを記憶に刻みつけておいた。
「けどよぉ、俺にはどうしても統合したい理由がある」
「……それは?」
「それは――――退屈だからだ」
「……は? た、退屈だと?」
聞き返しはしたが、実は理由の一つに成り得るかもしれないと思っていた返答でもあった。
神が退屈凌ぎで、他の生物たちに無理難題を吹っかけて楽しむ。そういう物語もあるからだ。不老不死で、万能で、望みが何でも叶う。そんな結末が分かっているミステリーを何度も見るような退屈な生に嫌気が差す。
故にわざと自分を不利にして戦いを挑んだり、様々な感情や行動を見せる生物を煽って、その過程を見て楽しむのだ。
神がそういった理由で、格下の存在に接触してくる話を知っていたので、それほどに驚きはなかった。いや、驚きといえば、本当にそんな理由で現れる神がいると実感できたことだろう。
「……俺と統合して、この身体を使って好き放題に暴れようってか? いや、わざわざこんな弱い身体を乗っ取るんじゃなくて、俺を取り込むって感じか?」
「む?」
「それに統合したとしても、ベースというか、意識そのものはアンタだろうし、俺っていう存在は消えてなくなる。違うか?」
「なるほど。そう捉えられても仕方ないが、それは勘違いだぜ」
「勘違い?」
「そもそもの話だ。俺はこの身体、そして意識をベースにするつもりはない」
「……どういうことだ?」
「さっき言った退屈っていう言葉に起因するが、俺はこの身体に飽きたんだよ」
「あ、飽きた? ドラゴンの身体にってことか?」
「お前には分からんだろうな。この身体の不便ってもんが」
確かにこれだけの大きさだ。顔だけでも東京スカイツリーを超えているだろうし、何をするにも他への影響が強いはず。ともすれば少しはばたいただけでも、近くにある星を破壊してしまうかもしれない。
つまり常に気を遣って動くことを要求されるなら、これほど煩わしいこともないだろう。
なるほど。そう考えると、彼の言った通り不便なのは間違いなさそうだ。
「……だが神なら小さくなったりできないのか? もしくは人型になったりとか……」
神ならば何でもありそうなので、そういうことも可能ではないかと思った。
「神となった時から、この姿は固定されちまった。故に、だ。今の俺にできることは、常に加減を意識して宇宙を遊泳することだけなんだよ。前にくしゃみをしただけで惑星を一つ吹き飛ばしちまったしな」
「それは……確かにつまらなさそうだな」
広大な銀河を遊泳できるのは楽しそうだが、それも何万年も続けていれば飽きてくるだろう。この身体で星に降り立ったとしても、間違いなく思うような楽しみ方はできないだろうし。
仮に身体が小さいのであれば、様々な星に降り立ち探検したりすることも可能。そうして宇宙人たちとコミュニケーションを取ることで、いろんな楽しみ方ができるはず。しかしイデヲスではそれは叶わない。
何せ、くしゃみ一つで惑星を吹き飛ばすほどだ。おいそれと星に近づくことすらできはしない。
「……ちょっと待て。ならここへはどうやって来た? アンタみたいな存在が地球に近づいたら、その影響だって計り知れないと思うが?」
「安心しろ。一時的なら、こうやって星に住む者にコンタクトくらいは取れる。もっともできるだけ影響だ出ないように時間は止めているがな」
「そういうことか。だからアンタは俺の身体をベースにして統合したいわけだ」
そうすることで自由に星々を行き来し、様々な生物たちと接触を図って、その文化を楽しむことができる。
「そうだ。だがさっきも言ったように、意識もお前をベースにするぜ」
「それだ。それが分からん。何でわざわざ俺の意識をベースにする必要があるんだ? アンタのままの方が、より退屈凌ぎができると思うんだがな」
「そもそも統合ってのは、二つの魂を一つにすることだ。肉体的に優劣はあっても、魂そのものには優劣はない。だからベースって考え方が間違ってんだよ。もっとも魂を受け入れる器の選択は自由だがなぁ」
「なるほどな。魂に優劣無し……か」
その言葉に自然と納得している自分がいた。輪廻転生という言葉があるが、それが事実であるならば、一つの魂はいろいろな存在へと移り込んでいるはずだ。
日雲だって、前世は虫だったかもしれない。雑草だったかもしれない。地球外生命体だった可能性だってある。もしかしたら、どこかの異世界でドラゴンだったことも……。
そう考えればイデヲスの言葉にも信憑性があるような気がしたのだ。それに何となくだが、イデヲスが嘘を言っているようにも思えない。だから納得できたのかもしれない。




