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GRSI-06 チームYの休日:星屑のハーモニー  作者: やた


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05.ノア・ブラウン

 エミリーがデジタル・アーチェリー場で静かに完璧な軌跡を追い求めていた頃、セントラル・オービタルの一角にある、廃棄された電子部品や機械の残骸が山積みにされた『ジャンクパーツ工房』では、ノア・ブラウンがその天才的な頭脳を「無意味な創造」に費やしていた。


 ここは、オービタル内から出る不要な電子廃棄物を再利用したり、趣味で何かを制作したりする市民に開放されている公共スペースだった。


 工房内は、様々な年代の電子基板、剥き出しのケーブル、錆びついた金属片、そして奇妙な形をしたプラスチックの塊が、混沌と山積みにされていた。しかし、ノアにとっては、それが宝の山に見えた。


 彼は、普段は完璧なシステム構築や、複雑なハッキングプログラムを組むことに全力を注ぐ論理的な天才だ。だが、この場所で彼が求めるのは、一切の機能性や実用性を持たない、純粋な「無意味な創造物」だった。


 ノアは、床に散らばるガラクタの中から、まるで目には見えない「音」に導かれるかのように、特定のパーツを拾い集めていた。それは、古い通信衛星の破片、故障した医療機器のモニター、使われなくなったドローンのプロペラなど、本来なら捨てられるはずのものばかりだ。彼の頭の中では、論理的なプログラムや計算ではなく、純粋な好奇心と遊び心に基づく、奇妙なオブジェの設計図が描かれている。


「よし、これでいい」


 ノアは、満足げにいくつかのパーツを手に取った。彼は、手慣れた様子で半田ごてを温め、繊細な電子回路を組み上げていく。その指先は、複雑なハッキングコードを入力する時と同じく、迷いなく、そして正確に動いていた。彼が作っていたのは、廃熱ファンと古いプロジェクターレンズ、そして壊れたデータケーブルを組み合わせた、くるくると回りながら壁に奇妙な光の模様を映し出す、小さなロボットだった。


 傍から見れば、それはただのガラクタの集合体にしか見えないだろう。何の役にも立たず、特別な機能もない。しかし、ノア自身は、その「無意味さ」を心から楽しんでいた。彼が「システム」という枠から解放され、純粋な好奇心と遊び心で創造する姿は、彼の内に秘められた自由な精神を表現していた。


「このロボットの光源は、古い通信衛星の破片を利用している。効率は非常に悪いが、発光スペクトルが独特で、面白い光の揺らぎを生み出す」


 ノアは、独り言のように呟きながら、最後の配線を繋ぎ終えた。そして、小さなスイッチを入れると、ロボットの胴体部分に取り付けられたプロジェクターレンズから、壁に不規則な、しかしどこか魅惑的な光の模様が映し出された。


 それは、まるでセントラル・オービタルの窓から見える星屑を、部屋の中に呼び込んだかのようだ。ノアは、その光の揺らぎを満足げに見つめていた。普段、彼は全てのシステムを完璧に制御し、効率と合理性を追求する。しかし、この瞬間だけは、彼はその完璧な「制御」から離れ、予測不能な「不完全」な創造を楽しんでいたのだ。


 彼の周りには、これまでにも彼が作ってきたであろう、奇妙なオブジェがいくつも置かれていた。どれも実用性は皆無だが、その全てがノアの、純粋な知的好奇心と、論理の枠を超えた創造性を物語っていた。


 完成したロボットをそっと床に置き、壁に映し出される光のショーを眺めながら、ノアは静かに微笑んだ。それは、任務を成功させた時の達成感とは異なる、もっと個人的で、温かい満足感に満ちた笑顔だった。このジャンクパーツ工房での時間は、彼にとって、頭脳を休ませ、そして新たな発想を呼び覚ますための、大切な充電期間だったのだ。


 工房からは、夕焼けに染まり始めたセントラル・オービタルの景色が見えた。空には、まだ薄く星々が瞬き始めている。ノアは、その空を見上げながら、完成したばかりの奇妙なロボットを抱え、宿舎へと向かうことにした。今夜の夕食で、チームの皆がこの「無意味な」作品にどんな反応をするか、彼にしては珍しく、少しだけ楽しみにしているようだった。

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