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一揃いの曙光《Quantiz and Synesthesia》  作者: 弥都 史誠
第七章

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13/15

13.彷徨う琥珀色は、①

 そうと決まれば、あとは早かった。

 早々に食事を終えて、全員でワイルアが滞在しているゲストハウスへ向かった。

 ワイルアの荷物は決して多くはない。ハリアカとランギが荷造りを手伝って、すぐに終わった。

 まず、ワイルアの衣類が入った大きなスーツケースを持ったランギと、カバーに入った重い三脚とダックブルーのショールを持ったハリアカが外に出る。

 ゲストハウスの前では、フイたちが道路で遊んで待っていた。

「お待たせ」

 ハリアカは子供たちが全員揃っているのを確認する。

 ワイルアは今までの宿泊費をクレジットカードで支払い、あっさりとそこを出た。

 ハリアカと目が合い、彼は僅かに微笑んだ。

「じゃあ、私たちのおうちにレッツゴー‼︎」

 フイが左手を振り上げて、先頭に立つ。アタアフアがフイの手を握って、二人で歌を歌い出した。

 その後ろを子供たちが続く。

「ランギ、重たくない?」

 ガラガラと音を立ててスーツケースを引くランギに、ハリアカが声を掛ける。

「これくらい、大丈夫だよ!」

 そう言ってはいるが、ランギの背丈ではスーツケースは大き過ぎるように見えた。

「ランギ、代わるぞ」

 ワイルアも声を掛ける。

「大丈夫だってば‼︎」

 ハリアカとワイルアの前を歩いていたランギは、強気でそう叫んだ。

 その証拠に、引いていたスーツケースを押す形に歩き方を変えた。

 自分が持つと言い出した手前、大人に頼るのはバツが悪かったようだ。

 それを見抜いた最後尾を歩く二人は、顔を見合わせて苦笑した。

「三脚、ありがとう。持つよ」

 ワイルアはハリアカが肩に掛けている三脚を受け取ろうとする。

「私も大丈夫」

 ハリアカは小首を傾げて含羞はにかんだ。

「──あなたの方が荷物、多いし」

「じゃあ、すまない。何から何まで」

 ワイルアは肩掛けバッグの位置を直す。

 そして二人は並んで子供たちの最後尾を歩き始めた。

 ダウンタウンを抜けて、大河の堤防沿いを歩く。

 先頭を歩くフイとアタアフアは、相変わらず歌を歌っていた。

 ハリアカは後ろから、子供たちを黙って見守っていた。

 しかしワイルアは、何か話す話題は無いか、何を話せば良いのか心がむず痒かった。

 ふと、大河に目をやる。

 河の水量は、堤防の階段が数段以上は沈んでしまった程深くなっていたが、夕潮の勢いは消えていた。

 間もなく水平線に太陽が沈む。

 隣を歩くハリアカの横顔を、残照が照らす。

 ハリアカの白い肌に乗ったミロの実の香りは、間もなくやってくる夕暮れに飲み込まれそうで、儚くも見えた。

「…何? 何か、付いてる?」

 ワイルアの視線に気付いたハリアカが、ふっと優しく笑った。

「いやっ…」

 ワイルアはハリアカに気付かれた事を、何とか誤魔化そうとする。

「──夕陽が凄く綺麗だと思って」

 あぁ、と言うように、ハリアカも大河へ向いて、夕空を確認する。そしてすぐにワイルアへと振り返った。

「写真、撮らなくても良いの?」

 その言葉に、ワイルアは写真の事など、すっかり頭の中から抜けていた事に気付く。

「あ、そうだ」

 急いでカメラをカバーから取り出した。

「──写真、撮っても?」

 立ち止まって、カメラをハリアカに見せる。

「うん…」

 ハリアカは軽くうなずいた。

 しかしワイルアは、構えたカメラを降ろした。少し考えてカメラをしまう。

「やっぱり止めておくよ」

「どうして?」

 ハリアカはほんの少しだけ驚いた表情をする。

「この美しさは、写真より目に焼き付けておきたい…かな」

 このすぐに消えてしまう刹那は、記憶の中に残しておく方が相応しいと思った。

 それは夕空の美しさではない。

「ふっふっ…なぁに、それ」

 笑いを堪えて、ハリアカは肩の三脚を肩に掛け直す。

「何でもない。ただ、そう思っただけだよ」

 ワイルアそう言うと、子供たちの後を追った。

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