94ペッカル奪還!
俺達は王都のはずれの廃屋を目指した。
城は宰相であるペグトに事情を話してありイエンスを捕らえてもらうよう指示も出してあった。
第二騎士隊員を引き連れ古い屋敷の周りを取り囲む。見張りの報告で第一騎士隊員の配置を確認すると一気に攻め込んだ。
多勢に無勢で騎士隊員は一気に捕まえた。
第一騎士隊員は拘束されてもまだそんな事を言っている。
ドラゴンをこんな目に合わせることがどれほど国家の反逆厚意になる事すら判断できないらしい。
「お前ら?第二騎士隊か?何でこんなことを?どうなるかわかってるんだろうな?」
「どうなるかはあなた達です」
落ち着いた素振りで、しかも呆れた口調でライノス第二騎士隊長が言う。
「お前ら覚えてろよ!イエンス殿下が黙っているわけがないんだ。後で吠えずらかくなよ!!」
「ええ、そうかもしれませんね。それがあなた達でなければいいんですが」
さらにライノスが煽る。
第一騎士隊員は青筋を立てて叫ぶ。
「ライノス。お前覚えてろよ!!騎士隊長の座から引きずり下ろしてやるからな。首を洗って待ってろ!」
次々に捕まった第一騎士隊員の怒号が飛び交う。
「いいから黙らせて連れて行け」
ライノス騎士隊長がそう言うと第二騎士隊員が彼らに猿ぐつわをして荷馬車に放り込み足も縛り上げて、またライノスの所に戻って来た。
「お前らなぁ、日ごろの恨みもいい加減にしろよ。ほら、ペッカルを助けるぞ」
俺は第二騎士隊員に呆れ口調で文句を言った。
「殿下、そんなつもりはありません。大切なドラゴンをあいつらはひどい目に合わせたんです。あれくらい当然です。さあ、早くペッカルを助けましょう」
「ああ、急ごう」
裏の倉庫だった建物に急ぐ。窓をすべて塞いであって中は暗い。松明を灯して中を照らす。
「ペッカル無事か?」
俺は明かりを持って中に入る。
大きな振動とうめくような声。
「ブブフォォォ~」
騎士隊員が塞いだ窓の板をはいで行き中に火の光が入り込んだ。
そこにいたのはぐったりとなった赤い塊。
これがドラゴンかと思わずにはいられないほどぐったりとなったペッカルがいた。
「ペッカル?すまん。すぐに外すから。許してくれこんなひどい事を‥」
ライノスや他の第二騎士隊員も走り寄って首の鎖や足の甲に打ち付けられたくさびを見て声を上げる。
「こりゃひでぇ」
「なんてことを‥」
「ここまでやるなんて許せねぇ!」
みんな口々に怒りを露わにする。
「すぐに外してやらなくては」
おそらくはと想定してハンマーやくぎ抜きのような道具を持参してはいた。
口輪を外しくさびの方は抜いてやることが出来たが首輪についた鎖がなかなか外れない。
首輪には頑丈そうな錠前が付いている。
「グガァ~」
ペッカルが怒りで我を忘れる。
口から吐き出された炎はすさまじくあっという間に周りにいた獣人数人を火だるまにした。
「うわぁぁぁ!!」「ぅぎゃぁぁぁぁぁ~」「あ!あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁ~」
俺達は手順を間違った。
ペッカルが興奮することは想定内。なのに口輪を先に外してしまったのだ。
俺は炎に包まれながら必死で魔力をペッカルに発動させ気を失った。雷撃が天井を突きぬけ花火のように空に駆け上った。
「ギャルゥゥ~(やめろ!!)」
上空で待機していたビーサンが異変に気づいた。
倉庫の中に滑空して来てペッカルに体当たりしてペッカルが吐き出す炎を消し止める。
「ギャルギャ、キャル。キュルキュル(バカペッカル。カイヤート大丈夫か?」
俺は身体中に火傷を負った。
すぐに他の隊員が火を消し止めて怪我人を運び出す事に。
ライノスも腕に火傷を負っていた。
一緒に来ていた救護隊員から廃屋で緊急処置を受け、ペッカルの傷の手当てをする。
ビーサンのほかにも、シルバ、辺境伯の持っているドラゴン4頭が揃っていた。
アンティ辺境伯が俺に声をかけた。
「カイヤート殿下。ご無事ですか?」
「ああ、何とかな。しかしまずったな‥」
早くしないとセリが‥
「私達がヴァニタス王と話をします」
「そういう訳にはいかない。俺が行く!」
「ですが、そのような身体では無理です!」
「ビーサン俺をヴァニタス王の所に連れて行ってくれ。ペッカルの事も謝らなきゃならん。いや、その前にヴァニタス王が無事なのか助かめなければ」
一刻の猶予もないと言うのに‥
俺は情けなくてギシリと歯を食いしばった。
「それは私に任せなさい」
そう言って俺を覗き込んだのはリンネだった。
「大叔母様?どうしてここに?」
「話は聞いたわ。もし、ヴァニタス王が寄生虫に操られているなら話が出来るのは弟のカレヴィしかいないはず。カレヴィは私の契約竜だったの。だから話が早いはず」
「カレヴィと契約してたんですか?知らなかった。彼何も言ってませんでしたけど‥って言うかあの状況じゃ無理だったけど」
「今でも、彼を呼び出せるわ。私が彼を呼び出して状況を聞き出す。そしてどうするかを考えた方がいいと思うわ」
「そんな事が出来るんですか。それはぜひお願いしたい」
そう割って入ったのはライノス騎士隊長だ。
ドラゴンの城の近くに行きリンネ大叔母様にカレヴィを呼び出してもらう。
それならきっとうまく行く。
「大叔母、感謝してもしきれません。ありがとうござます」
俺は痛む身体を押して頭を下げる。
「ほら、カイヤートしっかり、今からシェルビ国の治癒師に傷を治してもらいましょう。あっ、それからイエンスの事はサクト(皇王)に知らせたわ。今頃イエンスは捕らえられているはずよ」
俺は驚いた。目の前に見知った顔があった。
「カイヤート殿下。うわっ、これはひどい。すぐに傷を治癒しますので」
そう言ったのはシェルビ国のキアードとその婚約者のマリーズ。他にもう一組<真実の愛>に選ばれたアリトとレミナというカップルがいた。
「これは一体‥?」
「パウロがね、セリが危機だと聞いて二組の魔法が使える人を寄越したの。それで辺境伯のドラゴンでここまで移動して来たのよ。それにこれも」
「これは?もしかしてペッカルの首輪の鍵ですか!」
起き上がれないほどの痛みも吹き飛ぶほどの驚きだ。
「そうよ。イエンスから奪い取ってやったわ。まったくあの子ときたら‥しっかりお仕置きが必要ね」
「プッ!お仕置きって年じゃないですよ」
「いいから傷を治して、セリを救い出すわよ」
大叔母は年甲斐もなく張り切っている。まったく、あなたって人は‥でもすごくうれしい。
「大叔母様、セリは必ず助けますから無茶しないで下さいよ」
「とにかく殿下。みなさんも傷の手当てを‥さあ」
俺達はマリーズともう一人レミナという女性に治癒をしてもらい火傷はすっかり良くなった。
他の騎士隊員もちろんライノスも手当てを受けて回復し、ペッカルの傷も治すと言う快挙をしてくれた。
「みんなありがとう。ほんとに感謝する。これからドラゴン城に行くがどんな危険があるか知れない。だが、俺達はみんなで連携して必ずセリを連れて帰る。そして誰一人欠けることなくここに戻って来るからな!じゃあ、出発だ!!!」
「「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉ~やるぞ~!!!」」」」
みんなから気合の入った掛け声が上がった。




