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【神託】で選ばれた真実の愛の相手がくそなんですけど  作者: はるくうきなこ


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81お兄様との別れ


 私とカイヤートは山の頂上に座り込んでしばしその景色を眺めると辺境の神殿に戻った。

 浄化を終える前まで見えていた魔粒毒は見えないと思う。でも、まだ確かではない。

 だって、信じられないもの。ほんとに毒が消えたか確かな証拠が知りたい。

 「叔父様、これで毒は浄化出来たはずです。何か変わった様子はありました?」

 一刻も早く毒が無くなったかを確かめたい。

 「ああ、神殿にある診療所から報告が来た。ブドウ病だった人々の皮膚が綺麗になっているらしい」

 「それって‥毒がなくなっているって言う事よね?」

 「ああ、そうとしか考えられないだろう?セリーヌ。とうとう魔粒毒を消し去ったんだ。お前たちは本物の〈真実の愛〉のカップルだったんだな。いや、驚いた。あの言い伝えが本当だったとはなぁ」

 「ええ、そうよね。これまではあまり信じてなかったけど、こうなると言い伝えは本当だったって事ね」


 「セリーヌ。すごいわ。さっきまで空中を漂っていた毒がなくなったわ。ほんとに出来たなんて信じられない。ほんとにセリーヌったらすごいわ」

 マリーズはうれしさと驚きを隠せないとばかりに走って神殿にやって来た。

 それを言掛けるようにキアード様も。

 「いや、ほんとにすごいよ。これからは魔粒毒に怯えずに暮らしていけるなんて‥君は本当の聖女だな」

 「そんな。言い過ぎですよ。マリーズもキアード様も」

 みんなで魔粒毒の解除を心から喜んだ。

 

 あれ。イルはどこ?

 「叔父様、イルは?」

 するりと何処からかイルが現れた。

 私はイルを抱き上げて顔を擦り付ける。

 『もう、お兄様心配したわ』

 「にゃ〜」

 あれ?いつもは何言ってるかわかるのに?

 『お兄様、ふざけてないで返事してよ』

 「にゃにゃん」

 イルは抱かれているのが嫌だとばかりに足をばたつかせる。

 「フシャー!」

 『お兄様?』

 必死でお兄様に呼びかける。


 『セリーヌ、俺の役目は終わったんだ。もうイルの中にはいられないんだ。これからは天国でユーゴと一緒に二つの国を見守るからな。お前にはカイヤートがいる。何も心配ない。じゃあな』

 そんな声が脳内にした。

 「待って!いや!いやよお兄様がいなくなるなんて。せめてもう少しだけでも、ううん、後一度だけでも‥」

 「セリ?どうした?」

 私が大きな声を出して叫んだからカイヤートが驚いて私を抱きしめる。

 「お兄様が。イルからいなくなったの。ねぇ、カイヤート何とかして!そうだ。イヒム様にお願いして」


 『セリ、リートはあるべき場所に帰らないきゃならん。そうしないと魂はいつまでもこの世で彷徨う事になるんじゃ。それでいいのか?』

 イヒム様だ。 

 『イヒム様お願い。お兄様を返して!』

 『カイヤート、セリをどうにかしろ!分かるじゃろ?』

 「いや!いや!いやだ!お兄様がいい」

 私は駄々っ子のように叫んで泣きじゃくる。

 「セリ、落ち着け。イヒム様の話分かるだろう?リートの魂は返さなきゃ。大丈夫だ。俺が付いている。これからずっとずっとお前と一緒だ。リートだってそれを望んでいるからこうしたんだ。分かるだろう?」

 「お兄様が?ウソ!お兄様が私を見捨てるなんて、そんな事するはずないじゃない!」

 「セリいいか落ち着け。いいかリートは見捨ててなんかないだろう?見守っているからって言ったじゃないか。俺達が幸せになるのをずっと見てくれるさ。さあ、いつまでも泣いてたらリートが泣くぞ」

 『いやだ。いやだ、いやだ。お兄様、もう一度返事をして』

 心からそう願う。

 ふわりを頬を撫ぜられたみたいな感じがした。

 『セリーヌ、幸せになれよ。それだけが俺の願いだからな。もう泣くなよ。俺はいつだってそばにいる』

 その言葉がすっと頭の中をすり抜けるように通り抜けると金色の光が天に昇って行った。

 お兄様の魂が天に召されて行くって思った。

 ぐっと手を伸ばすがその光には到底届きはしない。


 「おにいさま~」

 私は声を張り上げる。

 その声が届いたかのように、光は空高くまで昇ると上空でぐるぐる輪を描く。

 物凄く名残り惜しいと言わんばかりのその光の輪に何度も手を伸ばす。

 「お兄様ありがとう。お兄様愛してる。お兄様私、幸せになるから。お兄様の分まで。ずっと一緒だよお兄様。姿も声もしなくても永遠にお兄様は私のヒーローだから」って叫んだ。

 どんな言葉でも言い尽くせないありがとうを込めて私は最後のお別れを告げた。

 その隣にはカイヤートが付いていてくれて、私の身体をずっとさすってくれてずっと「セリ、大丈夫。俺がずっと一緒にいるから、心配ないから」って囁きながら。

 「うん、わかってる。でも、今は悲し過ぎる」

 私は堪えきれなくて彼の胸に顔を埋めた。







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