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80遂に呪いを


 二人の熱い抱擁。なが~い口づけ。それからアード神様の甘い甘すぎる愛のささやき。

 

 カイヤートでさえもお熱いバカップルに目のやり場に困っている。

 「コホン!セリ、神様が仲直りで来て良かったよな。それで、宝剣で二つの国の間にある山の頂上を切り裂けばいいって事だよな?」

 「ええ、そうだ。そろそろ行かないと」

 「ああ、そうだな。って。声掛けれるか?」

 二人の世界真っ只中のアード神様とイヒム様。

 でもさすがに急いだほうが‥


 私はこわごわと声をかける。

 「あの‥イヒム様?そろそろ宝剣を」

 びくっと耳がヒクついて自分が何をしでかしているか気づいた様子のイヒム様。


 『ああ、すまんのぉ、つい、我を見失っておった。セリ、宝剣を。カイヤートわかっておるんじゃろうな?』

 言葉戻ってますけど?まあ、そこは今どうでもいいので。

 「ああ、神様。もちろん。すぐにドラゴンを呼ぶ。そしてあの山々の頂上をぶった切る!」

 私はそこで思い出す。そう言えば魔粒毒出魔物になった人は?魔呪光で魔呪獣になった人はどうなるんだろう?

 『イヒム様。二つの国で魔物になった人々はどうなるんです?ぶどう病で苦しんでいる人は?』

 『ああ、そうじゃなぁ。アード。呪いが解けたら魔物になった物はどうなる?』

 『呪いが解ければ元の人間に戻るはずだぞ。まあ寿命はどうする事も出来んだろうから、ずっと昔魔物になった物はチリとなって消えてしまうだろうな。病気は‥わからん』

 『そう言う事らしいぞ。そうだ。セリ、お前には病気の物を治癒する力を授けておこう。そうすれば万治うまく行くじゃろう?』

 「はい、それならみんなが元に戻りますね。もう、イヒム様最高です!!」

 

 私は実態のないイヒム様に抱きつく。

 すると素通りするはずの腕にしっかりと肉感が伝わる。

 『私もお前と出会えて本当に良かった。長いなが~いアードとの隔たりがやっと解けてまたこうやって一緒にやっていける。ありがとうセリ。いや、セリーヌ。さあ、お前たちにしか出来ない事をやって来るといい。そして幸せになれ』

 イヒム様がそう言うとアードがイヒム様を抱き上げた。

 そして天空から七色の光が降り注ぎ二人の神様はその光に吸い込まれるように天上に昇って行く。

 『二人に感謝する』

 『どうか幸せにな』

 感謝と祝福の言葉が告げられそして二人の神は空の彼方に消えて行った。


 「ああ、行ちゃった。何だか寂しくなちゃう‥」

 「ああ、でも二人が幸せになれたんだ。それに二つの国を救う手立てもわかった。さあ、セリ、俺達もやるぞ!」

 カイヤートが私の身体をぐっと引き寄せてキスをした。

 

 「ええ、すべて終わらせてみんなを元に戻さなきゃ。ねっ!」

 私を抱くカイヤート腕がすっと緩む。

 ぐっと顔が近付いて彼が私を覗き込む。

 「そこかよ。セリは俺とずっと一緒にいてくれるんだろう?」

 「もちろんよ。シェルビ国が元に戻ったからと言って私の居場所はあなたのそばに決まってるわ」

 「良かった。もう、この国に帰るって言ったらどうしようかと。いや、その時は俺も付いて来るけどな」

 「でも、これからは二つの国は仲良くやって行ければいいと思うわ。まずはそんな事より宝剣を」

  

 二人でアード神様に突き立てた宝剣を抜く。

 宝剣はすんなりと抜けた。大神殿を出て広い敷地に移動するとカイヤートがビーサンを呼んだ。

 

 まるで前世で見た映画のように空から真っ直ぐこちらに向かってくる物体が。

 脳内で『空を見ろ!鳥だ!飛行機だ!いや、スーパー〇ンだ』そんなキャッチフレーズが。笑う。

 

 ビーサンがあっという間に私達の目の前に舞い降りた。

 「クゥゥォォォ~(カイヤート呼んだ?)」

 「ビーサン。急ですまない。これから二つの間にある山のてっぺんに飛んでくれ」

 「キュウキュウ(了解!任せて)」

 ウソ。私、ビーサンが何言ってるかわかる。

 「カイヤート、私ビーサンの話が分かるみたい」

 「俺と番になったからじゃないか?なぁ、ビーサン。お前もセリの言葉もわかるだろう?」

 「クィィ~(もちろ~ん)」

 「ビーサンうれしい。これからもよろしくね」

 ビーサンは嬉しそうに翼を羽ばたかせる。

 無駄に力が強いせいで私達は吹き飛ばされそうになって髪は巻き上げられるるしカイヤートにしがみ付いて彼はデレデレになってるし!

 「ビーサン。わかったから」

 「ビィィ~(ごめん)」

 「いいよ」

 私はビーサンの首を撫ぜ撫ぜしていざ出発。もちろんイルも一緒に。


 ビーサンはあっという間に国境の連なっている山々に飛んだ。先にイルを辺境に下ろして叔父様たちに事情を伝えた。

 そしていよいよ。


 私達は国の一番端から宝剣を掲げる。

 宝剣の柄を握りしめた私の手の上にカイヤートの手が重ねられる。

 二人一緒に宝剣の柄を握りしめるとそこから一気に山の頂上を空気の層をぶった切るように。

 長い間に渡って二つの国を苦しめて来た呪いを打ち払うように。

 思いを込めて魔粒毒と魔呪光が消えてなくなるように。

 アード神様とイヒム様が言ったんだもの。絶対に大丈夫。でも、やっぱり不安は消えなくて。

 どうか、どうか、神様お願いですから。


 「セリ。大丈夫だ。何があっても俺が付いている。さあ、おりゃぁぁぁぁぁぁ~!!!」

 「ええ、カイヤート。行くわよぉぉぉぉぉぉ~!!!」 

 国の端から端にまたがるそびえたつ山々と空の間を切り裂いていく。

  

 ビーサンは私達を乗せてバランスを取りながらまるでわかっているとでも言うように三位一体化して、そして遂に一番最後の空間を切り裂き宝剣が空に舞う。

 「やった!!」

 「ええ、やったわ」

 「ビユゥゥゥ~(やったね~)」


 突然稲妻が空を切り裂く。

 シェルビ国のオロール光の翠色の光と金赤色の光が降り注ぎその光がプロシスタン国がわに流れ込んでいく。

 プロシスタン国からはオレンジ色の光が煌々と光り輝き二つの国の光が混じり合って行く。

 オレンジ色に光が二つの光に間に混ざり込むと突然毒々しい黒ずんだ紫色の光の粒が沸き起こった。

 まるで苦しみもがくように光の粒が畝ってとぐろを巻き抵抗するようにオロール光や月霞光のバリアを突き抜けようと何度も光の渦に突進しているようにも見える。


 「カイヤート。あれ大丈夫かしら?」

 私たちは地上に降りて空中の乱舞を見ている。

 確かにイヒム様が言ったんだからと思うがあまりに壮大で規模の大きな光に戸惑う。

 「俺たちの出番か?」

 「魔力を使うって事?」

 「ああ、あの毒の塊に一撃をお見舞いしてやる。ずっと俺たちを苦しめて来た毒のやつにな!」

 「ええ、それくらいやってもいいわよね」

 私たちはすぐにビーサンに乗ると毒々しい紫色に光に向かって魔力を放つ。

 カイヤートの雷魔法と私の浄化魔法は螺旋を描いてその塊を攻撃した。

 その瞬間、紫色の光の粒は空中で完全に消えた。

 その後には美しいオロール光の光の帯がどこまでも広がって行った。

 月霞光はどうやらオロール光の中に混じり込んだらしく、翠色の光にオレンジ色それに金赤色が混じり合い夕焼けのような美しい色の帯が出来上がって行った。

 その所々には翠色もあり金色もあり赤色もありオレンジ色もあった。

 それはとても美しい光のグラデーションで私とカイヤートはその光をずっと眺めていた。

 「きれい‥」

 「ああ、これで毒も無くなったって事か。何だか呆気ない気もするが、これでセリと結婚出来るな!」

 「カイヤート。デリカシー無い人は嫌いよ」

 カイヤートが耳をしゅんと垂らしたのは言うまでもなかった。













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