79お二人ほんとに神です?2
アード神様はこくりと頷いて私達を見下ろした。
『ああ、もちろんだ。そこにおる人間』
『もう、ふたりの名前はセリとカイヤートよ』
『セリ、カイヤート。お前たちは認刻印を持っているな。それを持っているということは<真実の愛>のカップル。二人一緒にこの宝剣で二つの国の間にある山の一番頂上を切り裂け、そうすれば二つの国の間にある見えないバリアが壊せるはず。そうすれば二つの国の呪気が混ざって互いの毒が中和されて毒は消えてなくなる。そしてオロール光がプロシスタン国にも広がり昔のように豊かな恩恵を与えられるようになるはずだ』
イヒム様が呆れたような顔をする。
『アード。あなたそんな仕掛けをしてたの?まったく、早く気付くべきだったわ。そうすればこんな事しなくても良かったのに!』
アード神様は慌ててイヒム様を抱き寄せる。
『イヒム。あの時の俺は嫉妬で怒り狂っていた。だからあんな呪いを‥でも、まさにここに運命の二人がいたなんて。もう、呪いは解けたようなもんだ。あの呪いは邪悪な俺の嫉妬心。それに対抗できるのは<真実の愛>の力だ。頼む。お前は俺の唯一。永遠の恋人。愛しい妻なんだ。頼む。俺のそばにいてくれぇぇぇぇ~』
愛しむような蕩けた眼差しでイヒム様を見つめるアード神様。
その姿は忠犬ハチ公みたいにイヒム様にすべてを捧げるって顔で。
『やっぱりあなたは優しいのね。呪いを解く方法をちゃんと用意してたんだもの、ちょっと見直しちゃったわ。でも、それって確実なのよね?』
おおぉぉぉぉ~イヒム様。どこまでも私達の事を考えてくれてる。
感動の嵐の中。私とカイヤートはアード神様とイヒム様を見比べる。
少し恥ずかしそうな顔でアード神様をみるイヒム様。
『最初は、お前を迎えに行って魔粒毒なんかなくそうと思ってた。でも、怒りに任せてプロシスタン国にもあんな事やっちまって、二つの国が行き来出来ないようにと二つの国の間にバリアを張った。いや、悪いとは思った。実際はいくらでも通れたがな。それでも後で互いの国の毒が混じれば無毒化できるように細工をしたんだ。でも、お前は帰って来やしない。それでもう俺の心はズタズタになってそして最後に<真実の愛>のカップルにしか呪いが解除できないように‥悪かった』
いつの間にかアード神様はイヒム神様の胸に顔を埋めて甘えている。
イヒム神様はアード神様の頭を優しく撫ぜたりなんかしちゃって。
『わかったわ。私も悪かった。意地になって‥』
『もう、いなくならないって約束してくれ。イヒムお前を愛してるんだ』
『もぉぉぉ。アードったら。私だって愛してるわ』
あの‥お二人ほんとに神です?
ったく。あんなに言い争っていたくせに?
愛の言葉なんか言い合っちゃったりして?
こんなの‥こんなの‥ただのバカップルじゃない!!
そんな話聞いてらんねぇよ!って言いたくなる。
でも、これで呪いを解く方法はわかったって事よね?
「アード神様。お取込み中申し訳ありませんが。それで間違いないんですよね?宝剣で二つの国の間の山の頂上の上をまっぷたつにするって事で?」
カイヤートが素っ頓狂な声を上げて尋ねる。
まあ、無理もない。そんな事が呪いを消し去る手立てだったなんて驚くから。
それも喧嘩別れした夫婦が仲直りして呪いを解く方法がわかるとか。
もう、漫画の世界みたいじゃない。
まあ、確かに宝剣は今まで誰にも抜かれたことがなかったし。
そんな事が出来るとしたらドラゴンに乗れる獣人がいなければ無理だったろうし。
そもそも私とカイヤートが出会っていなかったらそんな事も無理だった訳だし。
ああ、もう!
何だかな。
これって終わり良ければ総て良しみたいな?




