表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/68

7ユーゴ殿下がおかしい


 翌日学園に行った。

 馬車から下りると思った通り好奇の視線が。

 私はゆっくりと馬車から下りた。

 「おはようスコット辺境伯令嬢」

 えっ?誰?見るとユーゴ殿下だった。

 「おはようございます。ユーゴ殿下‥」

 私はどうして彼に声を掛けられたのは分からずじっと彼を凝視する。

 「えっと、あれ、俺の顔、何かついてる?」

 ユーゴ殿下が焦ったように手で顔を触る。

 「いえ、違うんです。殿下から挨拶されるなんて、私何かしてしまいました?」

 「いいや、何も。ただ、兄の勝手は振る舞いに少し腹が立っただけだ。あれだけ君の事を虐げておいて今度は勝手な婚約破棄だ。君もずいぶんひどい目にあってると思ってね。それに兄は婚約破棄出来なくてもしかしたら君に危害を加えるかも知れないだろう?だから、今日からはしばらく俺が兄から君を守る護衛の代わりをしようかと思ってね。どうかな?」

 ユーゴ殿下はいつもはぼさぼさの黒髪をきちんと整え声をかけた理由を几帳面に説明をしてくれた。

 これ、ほんとにあのユーゴ殿下なの?

 私はぽかんとして彼の話を聞いている。

 それにしてもどうしていきなり?

 それにそんな事をしてもらってはかえってややこしい事になりかねないんじゃ?

 脳内はせわしない思考が交錯する。

 「オデロ殿下の事は確かにごもっともですが、だからと言って危害をくわえるなんてあり得ませんよ。だからユーゴ殿下のお手を煩わせるまでもありません。ご厚意は有難く受け取りましたわ。では‥」

 「あの‥セリーヌ?と呼んでもいいかい?」

 ユーゴ殿下は一瞬間をおいて少し恥ずかしそうに聞いた。

 「あっ、はい」

 私はとっさに返事を返す。


 「じゃあ、これ受け取ってよ」

 ユーゴ殿下が私の手に無理やりイヤリングを押し付けた。

 「何ですこれは?」

 「見ての通りお守りだ」

 ユーゴ殿下は平然とそう言う。

 「お守りだとしても私が受け取るのもおかしいと思いますけど」

 ユーゴ殿下が珍しくクスッと笑う。

 えっ、意外と笑った顔素敵じゃない。

 なんて見惚れてる場合じゃなくて‥

 「王族からのプレゼントを断る気?」

 「でも、そんなの横暴ですよ」

 「いいから受け取って」

 私はイヤリングを彼に付き返す。

 するとユーゴ殿下はくるりと私の後ろ側に回り込んで私を後ろから抱き込んだ。

 「じっとしてて」

 あっという間に片耳にイヤリングを付けられた。

 「あの、困ります」

 ちょ、身体強張るじゃない!


 「ふっ、似合ってる」

 耳元でささやかれて背中がくすぐったくなりくにゅっと力が抜けた。

 それだけ言うとユーゴ殿下はさっと手を差し出した。

 「えっ?何です?」

 「教室まで一緒に行くから」

 「でも」

 「あっ、不敬だな」

 「それ言うんです?」

 私は少し頬を膨らます。

 ユーゴ殿下がその頬を指先でついっと押すとさっと手を取られた。

 そのまま教室までエスコートしてくれた。

 「もう、ユーゴ殿下ったら‥」

 私は仕方なく一緒に歩く。

 内心では私の事見てくれていた人が、心配してくれる人がいると思うとうれしかった。

 きっと人見知りの彼なりの優しさなのかも知れない。

 私は空いた方の手でそっと片耳のイヤリングに触れた。

 確か小さなピンク色だったわよね。これピンクダイアモンドじゃない?私に似合ってる?

 オデロ殿下さえも私にアクセサリーの一つも送ってくれた事なかったのにね。

 私の落ち込んだ気持ちが少し、いやかなり上がったのは言うまでもなかった。



 




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ