75シェルビ国で魔法が使えません
私とカイヤートは直ぐに支度を整えてスコット辺境伯領に向かう準備をする。
今回はライノスさんやクラオンさんには王都で待機してもらう事になった。
魔力温存のため、スヴェーレまではドラゴンに乗って移動してスヴェーレの教会から転移でスコット辺境伯領に行くつもりだ。
もちろんイルも一緒に。
スコット辺境伯領に着いてリンネさんに挨拶をした。
「セリ?あなた身体は?月喰いの日は大変だったんじゃない?」
リンネさんは相変わらず優しい。
「はい、でも、大丈夫ですよ。カイヤートが色々気遣ってくれるので」
「ああ、ふたりがうまく行って良かったわ」
「はい、今日は突然すみません。シェルビ国にどうしても行かなくてはならなくなって」
「あなたなら何時でも大歓迎よ。シェルビ国から帰ってきたらゆっくりして行って」
「はい、みんなとも会いたいし‥」
そこにアーポが駆け寄って来た。
「しぇんしぇ、あそべりゅ?」
「アーポ元気だった?会いたかったよ」
「ぼくもょっ!」
スヴェーレの教会にいる子供たちが駆け寄ってきた。
「久しぶり、みんな元気そうで良かった。月食いの日はどうだった?みんな怖かったでしょう?」
「うん、怖かった」
コニハが私の服の端を掴む。そっとその手を握る。
「でもリンネ様がセリ先生がいるから大丈夫って言ったんだ。だから俺たち我慢したよ」
ポンツは相変わらず強がりや。ポンツの頭をそっと撫ぜる。
「アーポが泣くから俺がずっと抱っこしてたんだ」とペッカー。
「ペッカー凄いね。アーポ良かったね。みんなと一緒に遊びたいんだけどシェルビ国が大変らしいの。今から行ってくる。帰ったら遊ぼうね」
「しぇりゅびきょく?」
「うん、アーポ。あとで遊ぼうね。そうだ!みんなにいいものを持ってきたよ」
私はカードを見せる。
ババ抜きのやり方を簡単に説明する。それから神経衰弱も直ぐに出来そうなので教える。
その間もみんなの目がキラキラ輝く。
もぉぉぉ、可愛い!!
一刻も早く浄化して帰って来なきゃ!
イルもみんなにくしゃくしゃにされた。
「にゃぁぁぁ(疲れるぅ)」と言いながらもうれしそうだった。
そしてしばらくのお別れとスヴェーレを後にした。
*~*~*
私とカイヤートは転移してスコット辺境伯領の神殿に。
ここにはすでにキアード様とマリーズが来ていた。
「キアード様とマリーズじゃない?どうしてここに?」
私は驚いて走り寄った。
「セリーヌ様。お久しぶりです。私達の力不足であなたに協力をお願いして申し訳ありません」
キアード様はかなりの魔力の持ち主なのに、それでもまだ足りないなんて‥
そこにマリーズが抱きついて来た。
「セリーヌ。もう、元気にしてた?ラバンから話は聞いたけどプロシスタン国ではどうなの?」
「ええ、マリーズこそ元気だった?ごめんね。あなた達にすっかり任せっきりで」
「そんなの‥それよりあの人が?」
きっと叔父様から話を聞いたんだろう。
「ええ、婚約者のカイヤート・プロシスタンよ。彼もいっしょに手伝いに来たの」
「カイヤート・プロシスタンです」
「カイヤート。私の親友のマリーズ・アトソン侯爵令嬢とキアード知ってるわよね」
「ああ、よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします。とにかくスコット辺境伯の所に」
急いで叔父様の所に向かう。
「セリーヌ良く来てくれた」
叔父様はかなり疲れた様子で出迎えてくれた。
「叔父様、大丈夫ですか?それで魔粒毒は?」
「にゃにゃにゃ?(どんな様子なんだ?)」
もちろん叔父様はイルの正体は知らない。教えないほうがいいだろう。
カイヤートが一歩前に出る。
「セリーヌ。彼が例の?」
叔父様がそう言うと私が紹介する前にカイヤートが挨拶を始めた。
「初めてまして、私はカイヤート・プロシスタンと言います。セリとは出会った時に運命の番だと分かりました。ですが、セリがなかなかいい返事をしてくれなかったんです。でも、やっと俺たち思いが繋がって番に慣れたんです。これは証刻印と言って番の中でも究極の愛のカップルに現れるものでしてそれはもうこれほどないって言うほど幸せなんです」
もう、カイヤートったら余計な事を‥
叔父様は呆れながらも辛抱強く話を聞いている。その顔は嬉しそうだ。
「ああ、カイヤート君がどれほどセリーヌを愛しているかよく分かった。だが、今は魔粒毒の浄化を頼みたいんだが‥」
「もちろんです!任せてください」
「だが、君は魔法が「叔父様、彼はユーゴ殿下の魔力を受け継いだの。ユーゴ殿下は私のために彼に力を譲ってくれたの。だから、二人で浄化をするから」
「そうか。究極の愛の二人ならきっと浄化も直ぐに出来そうだな」
私たちも叔父様も余裕で出来ると思っていた。
「そうなんですか。それは心強い」キアード様達も喜んだ。
神殿から出ると既に空中には魔粒毒が降り注いでいるようだ。
私とカイヤートは直ぐに手のひらで魔力を練る。
はっ!
えいっ!
やぁー!
何度も魔力を込める。
だが、手のひらにはそれらしい力が何も湧き上がって来ない。
「どういう事?カイヤートあなたはどう?」
「ああ、俺も全く反応がない。ここに来る前までは何でもないように魔力が沸いていたのに?」
「困ったわ。原因が分からなきゃどうにも出来ないわ」
「ああ、こうなったらドラゴンにでも焼かせるか?」
「火で焼いたとしても毒が浄化出来るか、それに山がたくさんあるから火は無理よ」
「じゃあ、どうするんだ?」
「あっ!しまった。忘れてたわ。オデロ殿下と婚約を解消したなら私の魔力はなくなってるかも。あっ、もうこんな大事な事忘れてるなんて!」
私は急いで叔父様に尋ねる。
だが、オデロ殿下は私との婚約解消を頑なに拒んでいてがさすがに国民から不満の声が上がった。
神殿も<真実の愛>の相手選びに高額な賄賂を貰っていたことが発覚。
新たに国王になったギルオン国王は今までの悪い繋がりを見直す事に着手。それによって大神官サロぺスも失脚した。
オデロ殿下は永久幽閉が決まり東の辺境に移送された。
もう表舞台に出てくることはないだろう。
もちろんオデロ殿下とセリーヌの婚約は速やかに白紙の状態に戻されたのでセリーヌの魔力が失われることはないはずなのだが‥
それなら魔力が使えないはずがないわよね?
「どうしようカイヤート。理由がわからないわ」
「って言うことは、原因はわからないって事か?」
「そうね‥そうだ。イヒム様に聞いてみたらいいかも。ちょっと待ってて」
そう言えばイヒム様最近全然話してない。どうしたんだろう?
それにこの状況どうすればいいか聞いてみなきゃ。




