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【神託】で選ばれた真実の愛の相手がくそなんですけど  作者: はるくうきなこ


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72遂に浄化の儀式に


 表に出るとビーサンが待っていた。

 「ビーサンで行くつもり?」

 「ああ、ここはちょっと演出をな」

 それって相当イエンス様に敵対心を燃やしてるってこと?

 男ってこう言うの見栄張りたがるのよね。

 「でも、私この格好なのよ!」

 「ああ、こうすれば問題ない」

 私は横抱きでビーサンに乗せられる。カイヤートが直ぐに後ろに乗って私をギュッと抱き込む。

 はぁぁ〜こんな姿でみんなの前に?

 「クッ!これって女神降臨ってやつだな」

 「カイヤートって楽しんでない?」

 「楽しいに決まってるだろ!お前と番だってみんなに公表できるんだぞ!」

 ああ、そっちか。



 ビーサンの乗って飛び立つとあっという間に城が見えた。こんなに近い距離なのに。

 城の敷地にある大教会の塔が見えて来た。すぐに敷地にあつらえた今日の舞台が見えた。

 その前にはたくさんの獣人たちが待ち構えている。

 誰かが私たちに気付いた。

 いきなり大勢の獣人がこちらに向かって手を振る。

 「「「おおおおおお〜聖女様だ!!!」」」

 大声援の中カイヤートが空を旋回してゆっくり地上に降りて行く。

 そこまでのデモンストレーション必要?脳内で突っ込む。

 でも、横抱きの体制で少し不安定なせいで声も出せない。


 ビーサンがゆっくり翼と羽ばたかせて私たちを無事に下ろした。

 城のバルコニーからは皇王と皇妃が顔を出している。

 カイヤートは私にそれを知らせて二人で手を振る。

 皇王と皇妃がそれに応えて手を振ると集まった獣人から歓声が沸き起こった。

 「セリ大丈夫か。緊張しなくていい。俺がついている」

 そう言われても緊張するに決まっている。

 そんな気持ちを察してかカイヤートがビーサンに合図を送る。

 「クゥゥゥン!」

 ビーサンは一声鳴くとゆっくり翼を広げた。バサバサと羽ばたきをしてみんなの目を自分に向けさせると一気に空に向かって飛び立ち上空で旋回をして去って行った。


 「セリ、見ろ、みんなはビーサンに釘付けだから安心しろ!」

 そう言う問題?もうバカなの?浄化の事心配してないの?

 「もう、終わったようなもんだ。なっ!」

 カイヤート恐るべし!

 散々脳内突っ込みのせいで私はすっかり浄化の事を忘れていた。


 カイヤートは私の手を取ると二人で一緒に大司教様らしき人の前に進み出る。

 さすがに緊張する。

 カイヤートは私を守ろうと手はギュッと握られたままだ。

 「そなたが聖女セリ殿か?」

 髭を蓄えた狼獣人らしい年配の大司教が琥珀色の瞳で私を見つめる。

 白いローブに身を包み金糸や銀糸で彩られたストールのような帯を首からかけている。

 この国に来た時、アーネこそが聖女だと言われ私は偽物だと言われ牢に入れられたけど私はそんな事はどうでもいい。この国の人を助けたいだけだから。

 ちょっとムッとしたのを感じ取ったのかカイヤートが一歩前に進み出る。

 もちろん手は繋がれたままだけど。

 「大司教、こちら大聖女セリ様にございます。なお、僭越ながら彼女は私の番である事が判明しまして昨夜ここに番の証である証刻印の発現に至りました。故に本日の浄化は私たち二人でさせて頂きます」

 「それはそれは、セリ殿が殿下の番とは誠におめでとうございます。ですが、本日は月食いの日。どうか聖なる光にて月食いの呪いの浄化お願いします」

 大司教は目をすっと細める。見透かされるような視線にイラッとするけど。


 「セリ、こいつの事はどうでもいい。一緒にやってくれるか?」

 カイヤートも大司教の嫌味ったらしい態度にイラッとしたらしい。

 「もちろんです殿下」


 私たちはいよいよ舞台に上がった。

 カイヤートが声を上げる。

 「プロシスタン国の民よ。今日はいよいよ百年に一度の厄災。月食いの日がやって来た。でも、恐れる事はない。ここにいる大聖女セリ様は素晴らしい浄化魔法の持ち主。そして私はその大聖女の番とわかり、今日ここで一緒に浄化の儀式を執り行う。はっきり言おう。月が欠けるのを止める事はできない」

 「「「ええぇぇぇ!!!」」」

 そこでちょうど月が欠け始めた。

 「ウオォォォォォ!!!」」」

 どよめきが湧き起こる。

 うわっ、わかっていても何だか恐いよね。イヒム様こんな時声かけてくれてもいいんじゃ?

 『‥‥‥』

 はっ、イヒム様ったらひどくない?

 迫る大役に気持ちが張り詰めて行く。

 その時、会場の端っこにシエメンやチャーレ、ピョルンたちを見つける。

 私はそちらににっこり微笑むと彼らも手を振ってくれた。

 それだけで私の緊張はほぐれた。

 『ほら、やっぱり私は必要ないじゃないか。セリが出来る事をすればいいんだよ。呪いなんて最初っからないんだから』

 『そうは言っても‥イヒム様ぁ~』

 『がんばれ!』

 あっ、もう!!


 「みんな聞いてくれ!月が欠ける事は止められないが、呪いは浄化出来るとセリ様は仰っている。今からそれを証明する!」

 カイヤートったら、大見えを切ったわね。

 確かにザンクの花を駆除した。でも、まだ全てではない。全く毒が無くなったわけじゃないのに。

 「皆さん聞いて下さい。呪いは全て浄化出来るとは限りません。もし、気分の悪い方や体調がおかしいと思われたら診療所でも巡回の騎士にでも良いから頼ってください。直ぐに浄化に伺います。それにこの症状にはハチミツも効果がありますのでそれも試してください。どうか、私たちは全力を尽くしますが皆さんの協力も必要なんです」

 みんなは驚いたように私の話を聞いている。


 さらに月が欠けていく。明るかったひだまりに影が差す。

 私は空を見た。これってやっぱり皆既日食に似てるな。そんなことをぼんやり思う。

 「セリ、急いだほうがいい」

 「ええ」

 カイヤートに咲かされて急いで舞台の壇上に上がる。

 私たちは魔力を手のひらで練り上げ始めると獣人の視線が一気にこちらに向いた。

 私の手のひらで水色の光がカイヤートの手のひらで金色の光が。

 それは空中に漂っていく。


 そしていよいよカイヤートが最大限の魔力を込めて雷撃を打ち上げた。

 まるで大きな打ち上げ花火のような金色の光は、天空に開く花びら?駆け上る光のシャワー?神への挑戦?のように力強く空中に瞬いて行く。

 「いまだぁぁぁ!!」

 カイヤートが叫んだ。

 私は思いを込めた魔力を一気に放つ。

 水色の光の粒子がその大輪の花を追いかけるように一気に空に駆け上る。

 金色の光はビリビリと横方向に光の帯を広げてすでに王都の全域にまで広がり空を覆い尽くしている。

 私の水色の光はその金色を追いかけて包み込んで行く。

 まるで愛する人と出会ったように甘く切ない恋心みたいに光が溶けて行く。


 「何だ。神々しい光だ」「ああ、呪いが解けているみたいだ」「これはもう神のみわざとしか」

 次々に歓声が上がりみんなの歓喜の声が響めく。

 そして無事に光は空中に消えて行った。


 それでも月はそのまま太陽を覆い隠し真っ暗い時間が流れみんなは固唾の飲んでその時間をやり過ごす。

 そしてだんだん明るさが戻って来た。

 そしてついに太陽が完全に姿を現した。

 まあ、みんなは月だと思ってるんだけどそこは追及しない。


 「あれ?おい、無事か?」

 「ああ、何ともない」

 「俺達‥呪われてないな」

 「ああ、これも大聖女様のおかげだな」

 「「「大聖女様ありがとうございます!!」」」

 こうして浄化は大成功した。


 「皆さん。月喰いの日の浄化は大成功です。すべての民に神の祝福を‥」

 大司教がみんなに言葉を掛ける。

 あなた、何もしてないですけどね。

 大司教が私達を案内するとばかりに先に立って歩きだした。

 私達は大司教のついてみんなに手を振った。

 チャーレ達にもそっとお別れを言ってその場を後にした。








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