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62可愛いがたくさん


 私は温かな温もりに包まれていた。

 とても心地良くてその温もりに顔を埋めたくなった。

 何度か身じろぎ意識が目覚めて来る。

 うん?

 誰?

 お兄様?

 ああ、久しぶりに人の温もりだぁ~


 あれ?待って。お兄様のはずがない。

 そう思った瞬間意識が覚醒した。

 ばちっと目を開くと目の前に見知った顔の男が。

 かいやーと‥?えっ?そんなばかな?

 「きゃぁ~。何であなたがここにいるのよ!もう、出て行ってよ!」

 カイヤートが飛び跳ねるようにベッドから飛び出て行く。

 「セリ。誤解だ。俺はただ‥」

 私は自分の姿を見る。

 知らない多分これはナイトウェア。そんな淫らじゃない普通の白色の物を着ていた。

 「ひどいわ。私‥」

 「待て。俺はお前に何もしていない。キス一つもやってない。損じてくれ。お前は昨晩ここに来て気を失ったんだ。少し熱があって‥きっと寒かったんだ。セリに薬を飲ませたら寒いって言って、それで、俺はただ温めるつもりで」

 カイヤートは必死に説明をする。

 そう言われてそう言えばここに来てイルに会って彼にザンクの花の説明をして‥あっ、そこで意識を失ったのね。

 でも、ちゃんと着替えまでして、一体誰が着替えを?やっぱり!

 「そんな出鱈目信じるとでも?これはどういう事よ。私はドレスを着ていたのよ。一体いつの間にこんなナイトウェアになってるのよ。ふん、どうせ裸でも見るつもりだったのね。ほんとにいやらしいんだから」

 自分言いながらもそんな姿を見られたと思うと羞恥で顔が火照った。

 「ちがっ!着替えはちゃんと俺の乳母をしていたヨールに頼んだ。俺はお前の裸なんか見ちゃいない。俺だってそりゃ見たいと思った。でも、誓ってそんな事はしていない。だってセリが苦しい思いをしているのにそんな事出来る訳がないだろう?」

 どうも怪しいのよね。じゃあ、どうしてそんなに狼狽えるのよ。


  そこにイルがベッドから飛び降りて来た。

 「にゃやぁぁん(朝からうるさいな)」

 「イルどこにいたのよ」

 「にゃにゃにゃ?(どこってここにいた)」

 「じゃあ、カイヤートが何かしたのを見た?」

 「にゃん?にゃぁぁ~(うん?いや、仲良く寝てたぞ)」

 「何もしなかった?」

 「おい、俺は誓って何もしてないからな!」

 「にゃ、にゃ~ん(ああ、何もしてなかったな)にゃにゃにゃにゃ?(こいつ玉付いてんのかよ?)」

 「イル、お前ひどくないか?俺は必死で我慢して‥くぅぅぅ~」

 「二人ともいい加減にしなさいよ!!」

 私は二人に枕を投げつけた。

 それを交わしてカイヤートもイルも部屋の外に逃げて行った。



 しばらくしてヨールさんというお婆さんが部屋に入って来た。

 「お嬢様。お加減はいかがです?少し額に触れても?」

 「はい、気分もいいですし熱はないように思います」

 「はい、さようですね。熱はすっかり下がっておりますね。昨晩は勝手に着替えをさせていただきまして申し訳ございませんでした。坊ちゃんはやんちゃですが、根は真面目で優しいお方です。どうか、よろしくお願いいたします」

 ヨールさんに頭を下げられて恐縮する。

 「とんでもありません。私の方こそ遅くに伺いお世話までおかけして本当にありがとうございます。着替えもして頂いて‥」

 さっき、あんなにカイヤートを責めた事を後悔する。


 「とんでもございません。そうだ。お食事をお持ちしましょう。何か食べたいものがおありですか?」

 「いえ、私もう起きれます。食事もダイニングに行きます。これ以上お世話をおかけするわけには行きませんから」

 「でも、そうだ、一度ベッドから出て見られては、それでも大丈夫なようでしたらダイニングにご案内しましょう」

 ヨールさんの話を聞きながら私はベッドから出て立ち上がる。

 うん、ふらつきもない。気分も悪くない。逆に何だかスッキリした気分だ。

 「ヨールさん。大丈夫そうです」

 「それは良かった。では、着替えをお持ちしましょう。ですが朝食は大人数でしてお嬢様がご覧になられたらきっと驚かれますよ」

 「そう言えばたくさん子供さんがいらっしゃるとか。私子供の世話慣れてますから。驚いたりしませんよ」


 私は水色のワンピースを出してもらってそれに着替えて髪を後ろで結んだ。一人で着れるワンピースなので支度も自分で出来た。

 

 ヨールさんがダイニングに案内してくれた。イルも一緒に行く。

 「セリ。起きたりして大丈夫か?無理するな」

 カイヤートが走り寄って来た。

 「お兄ちゃん。この人誰?」

 昨晩あったチャーレではなく犬耳の女の子が聞いて来た。

 「ミコ。彼女はセリって言うんだ。聖女なんだぞ。さあ、みんないいから座れ!」

 六人の子供たちは興味津々で私を見た。

 「皆さんおはようございます。私はセリと言います。一緒に朝食を食べてもいいかしら?」

 「いいよ。お姉さんセリって言うんだね。ここ座っていいよ」

 そう言ってくれたのはチャーレだった。

 「ありがとう。それからこの猫は私の大切な家族で名前はイルって言うの。よろしくね」

 「にゃぁあ~ん(よろしくな)」

 「うわぁ、可愛い。猫ちゃん触りた~い」

 「ぼくも」「わたしも~」「ぼくみょ~」

 これは大変な事になりそう。

 「先にご飯を食べてから順番にね」

 「にゃん(いやだな)」

 『イルったら!』

 「ほらみんな先に食事だぞ!」

 さすが、カイヤートの一言で子供たちが静かになった。


 大きなダイニングテーブルにたくさんの子供たちが揃って座っている。

 「セリ。こっちからシエメン十一歳鹿獣人だ。ベアは羊獣人で十歳。それでさっき言ったミコ。ミコは犬獣人でベアと同じ十歳。そしてチャーレとアルビは狼獣人で八歳と六歳。最後に一番小さいピョルンも犬獣人で三歳だ。みんな挨拶しろ!」

 「「「「「おはようございます」」」」」「おひゃよーごじゃましゅ」

 か、かわいい。かわいい。かわいい。がたくさん!

 私は一目でみんなの虜になったのは言うまでもなかった。









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