53やっと一息
私はすぐに部屋に入った。
カイヤートが何か言っていたが耳には入っていなかった。
「にゃぁ?(どうした?)」
イルが駆け寄って来る。
抱き上げて顔をペロペロされる。
『もう、お兄様ったら‥何でもないわ。それよりお兄様、アーネがここにいるの。それも聖女として』
『アーネが?でも、あの女はセリを刺して捕まってるんじゃ?』
『私もそう思ったけど、彼女魅了魔法を使ってるみたい名の。あっ、それに私おかしいの。アーネの周りにドロドロした怪しいドピンクの色が見えるの。気持ち悪いわ』
『う~ん。‥セリは加護の力を貰ったはずだよな。もしかしたら悪いものを見る力が付いたとか?』
『まさか‥』
『まあ、はっきりするまで気を付けた方がいい』
『うん、でも私聖女として認められなかったから、明日にでもスヴェーレに帰ろうと思うの』
『だが、月喰いの日の呪いはどうするんだ?お前は困っている人を放ってはおけないだろう?』
『でも、アーネがいるし‥』
『そう言えば俺も少し気になる事があるんだ』
~お兄様の話~
お兄様はプロシスタン国に来てイルの身体には行ってからもぶどう病を直す方法がないか調べていたらしい。
まあ、自分が病気だった事もあったし、ユーゴ殿下のお母様の病気の事もあったらしい。
でも、ユーゴ殿下のお母様も亡くなりシェルビ国も出てどうする事も出来なくなっていたが、この国でバショーが普通に薬として使われていると知った。
ヒガバナは根や茎は毒があるが乾燥させて煎じて飲むと喘息や肺の病に聞くらしい事が分かった。
シェルビ国もぶどう病の初期に使うが薬害があって色々問題があった。
でも、ところ変われば扱いも違うとわかりまた興味を持ち始めたのだとか。
今日は早速城の庭に出て野草の散策をしたらしい。
『これがたくさん生えていた。ザンクという名前らしい』
「お兄様!それは毒草よ。すぐに捨てて!」
私はその植物を見た瞬間、毒々しい色が見えてそれが毒だと分かった。どうしてかはわからない。
「にゃ?(まじ?)」
イルは急いでそれを窓から放り出す。
私は急いでイルの足をきれいに洗う。
そこに侍女のナターシャが扉をノックした。
ナターシャに部屋をきれいにするように頼んでドレスを脱がせてもらう。
事情を話すとナターシャが耳をピクピク解させてうれしそうな顔をした。
良かった。怒ってない。
「猫ちゃんがあの雑草を持ち込んだんです?まあ、とってもやんちゃなんですね。でも、あれは毒草ですからすぐに捨てられて良かったです」
「でも、そんな毒草がお城にまであるなんて」
「はい、しつこい野草でどこでも増えて行くんです。でも、普段は花は付かずあまり害はないんですけど、今年はなぜか白い花が咲いていてその花粉が毒になるらしいんです。いえ、私達もザンクの花を見るのは初めてで、何でも百年に一度咲く花だそうで‥」
ナターシャは私のドレスを脱がせたりしながらそんな話をしてくれた。
百年に一度?
前世でも竹の花が咲くと不吉な事が起きる何て迷信があったけど、もしかして月喰いの年に合わせて開花するとか?
まさかね。
私はドレスを脱いでやっとほっと息をついた。
ぼすんと部屋のベッドにダイブする。
そこにイエンス殿下からお茶のお誘いがあった。
どうして私とお茶を?
まあ、女好きの皇族だから、人間は物珍しいのかも。
それにしてもお腹が空いた。
取りあえず用意されたランチを食べながら考える。
それにカイヤートの事もあって気分は最悪だった。
まあ、物見遊山と行きますか。
私は了解したと返事をした。
イルはやっとシャワーが出来ると言った。
『お兄様シャワーをする気?』
『ああ、今まではずっと周りに人がいただろ。もう、風呂に入りたくて仕方なかったんだからな』
『まあ、そうだけど‥』
『心配するな湯船には浸からない。背丈が無理だからな』
『そうね。じゃ、ゆっくりして。あっ、でも一人で大丈夫?』
『久しぶりに一緒に入るか?』
『‥まさか、中身がお兄様なのよ。もう、いいから入って来て!』
イルはルンルン気分で風呂場に行った。
猫のくせに?でも、まあ中身は人間。
カイヤートにはがっかりしたけど、私にはお兄様がいる。
私はイルがいるから。




