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【神託】で選ばれた真実の愛の相手がくそなんですけど  作者: はるくうきなこ


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51あなたに邪魔はさせない(アーネ)


 どうしてセリーヌが?

 驚いた。

 私はセリーヌを刺した後、牢に入れられた。

 それから牢番を魅了魔法で誘惑して牢から逃げた。

 

 オデロ殿下を頼ろうとしたけど彼はもう私など眼中になかった。

 魅了魔法を使おうとしたらオデロ殿下の腕に魅了魔法を無効化する魔道具らしい。

 チッ!

 ったいう私もそんな褒められたわけじゃないけど。


 大体、私の婚約者だったドーソンが悪いのよ。

 あいつったら私という<真実の愛>の相手がいながら学園では他の女の子と遊びたい放題で。

 確かに瞳の色は翠緑色ではなく茶色とか私より劣る子ばかりだったけど、私は私だけを見て欲しかった。

 だから私も他の男と付き合おうって思ったんじゃない。

 運よく二年生の時クラスが同じだった男の子が魔道部の子で、この男の子コベックって言うんだけど、ちょっと優しい言葉を掛けただけなのに何でも私の言う事を聞いてくれた。

 コベックって意外と魔道具の事を知っていてそれで魅了を発動する魔道具があるって知ったの。

 私が狙いをつけたのはオデロ殿下。他にも高位貴族がいたけど、どうせなら王太子が一番でしょ。

 だから、古道具屋で魅了魔法を発動するネックレスを見つけた時はすごくうれしかった。

 そしてオデロ殿下は思惑通り私に魅了されたってわけ。

 なのにユーゴ殿下が出て来ておかしくなった。まさかユーゴ殿下がセリーヌを庇って死ぬなんて予想できた?出来る訳ない。

 私ったらあの時完全に動揺して思わずセリーヌを刺してしまって。


 運よくまだあのネックレスは取り上げられなかったから、牢番を誘惑して実家に戻った。

 このネックレス。私が念じない限り魅了魔法の発動はないから、嫌な相手に言い寄られる心配もないって言う優れもの。

 このネックレスを持っていて良かったって心底思ったわ。

 でも、実家は爵位を取り上げられて没落。両親はすでにどこに行ったかもわからなくなっていた。

 それに逃げ出した事がばれて追われてもいた。

 私は神殿を頼ってそこでネートスと言う神官を誘惑して転移した。国はどこでもよかった。でも魔力が少ない私が転移出来たのは隣国のプロシスタン国だった。

 こんな獣人の国。しかも田舎。すぐに王都に向かったわよ。

 私に野暮ったい田舎暮らしなんか出来る訳がないじゃない。

 王都に着くと人間の女は物珍しいのか獣人の男がやたらと近づいて来た。

 いやだいやだ。獣人なんて‥何だか匂わない?

 でも、背に腹は代えられない。おかげで私は寝る所や食べ物に不自由はしなかった。

 もちろん、こんな下っ端に用はない。

 私は贅沢な暮らしがしたいんだから。

 プロシスタン国の皇太子であるイエンスに目をつけたってわけ。でも、獣人って言うのがなぁ~。

 婚約者がいる?そんなの関係ないから。


 イエンス様が王都の巡回をしていると知って、それを狙って彼の前で倒れたふりをした。

 イエンス様は私に駆け寄るとさっと私を抱き上げた。

 金色の髪と琥珀の瞳。整った顔が私に向けられた。

 私はさっと周りの物を見る。

 乗っていた馬もかなりのもの。鞍や騎士の装備もいい。

 それとなく彼の服を触る。

 着ている服もかなりの高級品。生地も仕立ても良く袖口に施された金糸の刺繍も見事。

 匂いもしない。完璧じゃない。やっぱり高貴な人。じゃなく獣人は違うんだ。

 この国の皇族ってシェルビ国並みじゃない?合格じゃない。

 それからエイっ!魅了魔法を発動させる。

 「君の名は?」

 その瞬間、彼は蕩けるような瞳で私を見つめたまらないように息を吐いた。

 「アーネと申します。あなたはイエンス様ですか?」

 「ああ、私の名を知っているのか?」

 「はい、シェルビ国でも聡明で勇敢な皇太子がおられると聞き及びました」

 甘い微笑みが帰って来る。

 「アーネ。アーネはシェルビ国から来たのか?」

 「はい、シェルビ国では聖女になるはずでしたが、王太子の理不尽なふるまいで無理やり‥でも、私逆らったんです。それで牢に入れられて‥わたしはあの国から逃げて来たのです」

 ぎゅっと身体を縮こませて怯えたような仕草をする。


 イエンス様が憤怒でぐっと身体を強張らせた。

 「それは‥アーネを我が物にしようとしたと言う事か?」

 怒りで眉間に皺をぎゅっと寄せている。

 そんな顔は恐い。でも、私の事を思っているとわかる。

 「でも、神官が手引きしてくれて逃げ出せたのです。命からがらこうやって‥そしてあなたに助けられて」

 「ああ、アーネ。出会えたのはきっと運命。私の中の本能が君が番だと告げている。アーネ君はどうだ?」

 「はい、私も運命だと‥」

 翠緑色の瞳をこれでもかって言うほど見開いて口角をぐっと上げる。

 完璧な悩殺スマイル。

 イエンス様は驚いたように口を開けた。

 あっ、やり過ぎた?

 涎、落ちそうです。早く口を閉じてよ!脳内でそんな事を思っていると。

 いきなり彼の唇で唇を塞がれた。

 柔らかな唇、食むような優しい口づけにうっとりとなる。


 「ああ、何と甘露。アーネの唇は甘いな。さあ、もう安心していい。どうだ?私と共に城に行ってくれるだろう?」

 もう、これは確定だ。

 「こんな私でいいんですか?」

 魅了している私まで胸キュンだ。

 「当たり前だろう。アーネは私の番なんだ!おい、ムーンドール。彼女に失礼のないよう申し送りをきちんとしてくれよ!」

 彼は側近のムーンドール様に素早く命令をした。

 あっ、ムーンドール様も狼獣人なんですね。銀髪素敵です。いや、この国、もっと野蛮な国だって思ってたけど全然違うんですね。

 それにイケメン多いし。このままプロシスタン国に住んじゃお!

 ってなった訳。

 

 そして私が魔力を使えると知ってイエンス様はますます私にべったりになった。

 彼の婚約者だったミリエル様。今では婚約者の立場も風前の灯火。

 何でも月喰いの日の厄払いをして欲しいとか。

 それが終われば晴れてイエンス様の婚約者に慣れるって言う時に‥

 セリーヌ。あなたに邪魔なんかさせないんだから!!






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