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4オデロ国王に呼び出される


 その頃俺は国王に呼び出されていた。

 「オデロ、卒業パーティーでの暴言どういうつもりだ?」

 金赤色の鋭い眼光が俺を睨みつけた。

 俺は年甲斐もなく怯んだ。

 「ち、父上、ですがあのセリーヌは俺の<真実の愛>の相手ではないんです!」

 俺は父に部屋に入るなり怒鳴られ怖気づいて言葉がしどろもどろになった。

 チッ!どうして俺がそんなに怒鳴られなきゃならないんだ?

 あいつは傷物で神殿が選んだからと言って絶対に俺の相手じゃないはずなんだ。

 「神殿が選んだんだぞ。お前はその選択に逆らうのか?」

 更に畳みかけるように父が言葉を落とす。

 まだ座ってもいない。立ったまま父が近付いて来る。

 真正面に腕組みをした父が立った。


 それでも必死で反論する。

 「ですが、父上だって<真実の愛>の相手とは結婚しなかったじゃありませんか!」

 「それは相手がぶどう病になったからだ」

 「えっ?それは事実なんですか?高位貴族は魔力が強いからぶどう病にはかからないんじゃ?」

 素っ頓狂な声が出た。

 俺はそう思っていた。ずっと。

 「おまえは何を言ってる。魔粒光は王都に出さえ降り注ぐことがある。空気中に漂う毒をどうやって防ぐんだ?息をせずにはいられまい。だからこそみんな神殿の神粋の儀に従うんじゃないか。夫婦としてうまく行こうがそんな事は構わないんだ。<真実の愛>で選ばれた者の義務としてな」

 「ですが、結婚しないものもいます。俺の周りにだって別れた奴だって‥」

 「ああ、だがその後はどうなる?考えてもみろ。みんなから白い目で見られずっと後悔を引きずって生きて行くんだ。お前もそうなりたいのか?」

 「ですが、魔粒毒の大量発生はもう二百年近く起きてないじゃないですか!」

 「ああ、それがどういう事かわかるか?今すぐ起きるかもしれんということだ。もういい!そんな事もわからんばかだったとは‥」

 父が額に手を当てて首を横に振った。

 「ですが父上!」

 「スコット辺境伯令嬢と婚約破棄をするならお前は廃摘する。相手は男爵令嬢だったか?男爵家に入れれば良いがそうでなければ平民だ。お前のようなものが平民として生きていけるのかもわからんが」

 「そんな、待って下さい。形だけあの女と婚約を続ければいいんですか?」

 「みんなそうしとる。民の上に立つ王族がそんな事も出来んと示しがつかん。オデロお前にはその程度の事もわからんのか?」

 そんな事わかっている。でも、セリーヌを見るとそれだけで身体が拒否反応を起こす。

 女のくせに俺とほとんど変わらない身長で筋肉質。おまけに顔には傷があり全く可愛くない。あんなのが俺の妻に‥冗談じゃない!

 「わかっています。でもどうしても無理なんです。生理的に受け付けないんです。だから‥父上、もし俺とアーネで魔物退治に行ってうまく行けば俺とアーネの婚約を許してもらえませんか?」

 父の目がぎょろりと見据えられる。

 ひぃっ!

 「そんなばかな事が許せるとでも?閨を共にするのが嫌なら妾としてそのアーネとかを召し上げればいいだろう。とにかく婚約をなかった事に出来るのはスコット辺境伯令嬢が死ぬか奇特な病にでもなった時だけだ」

 「あいつが‥病気?‥わかりました」

 あんな健康そうな女が死ぬか病気?あり得んだろ!

 「ほんとに分かったんだろうな?」

 「‥あっ!もしセリーヌが婚約を破棄したいと言ったら‥」

 「そんな事があるとは思えんが、万が一彼女がどうしてもいやだと言えば‥いや、そんな事はないだろうな」

 「父上。今言った事‥いえ、いいんです」

 俺はそれだけ言うとくるりと身体を翻し父の執務室を後にした。

 なんだ。簡単な事じゃないか。セリーヌから嫌だと言わせればいいんじゃないか。

 あいつは俺との婚約を破棄すると言ったんだからな。

 俺はもう結果は見えてると思った。













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