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【神託】で選ばれた真実の愛の相手がくそなんですけど  作者: はるくうきなこ


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36饒舌なオデロ殿下


 教会の聖堂でオデロ殿下を迎える事になった。

 私は聖女が着ると言う真っ白い聖衣と言われる服を渡されてそれに身を包んだ。

 シェルビ国でも神官が来ていたような長い衣の衣装だ。

 髪は片方ずつまとめて耳元で整えられた。まるでイヒム様のようだと思い心の中で苦笑する。

 リンネさんは司祭の正装で現れた。

 そして初めてお目にかかったステン・アンティ辺境伯は父より年らしく羊獣人。

 ぐるりと巻いた角が立派でポンツが大人になったらあんなになるのかと思ってしまう。

 それにもちろんカイヤートとライノスさんとクラオンさんも同席する事になった。

 

 私は緊張で胃がキリキリ痛かったが、ぐっと我慢してリンネさんたちの一緒に聖堂に入った。

 両サイドには花や鳥の美しいステンドグラスが描かれアーチ型の美しい曲線を描く天井には創世記とも言える装飾画が描かれている。

 アード神とイヒム神。あれ狂うアード神。イヒムに剣を突き立てて。逃げのびたイヒム神が子を天に捧げる姿が。

 その周りには天使が舞い一番高い場所の中心に取り付けられたガラス窓から太陽の光が降り注いでいる。 

 まるで神降臨のように。

 ああ、そうか。プロシスタン国の創始はこの人なんだ。そんな事を思いながら真ん中の通路を進んでいく。

 ほんとにきれい‥聖堂には初めて入ったけどその美しさに圧倒される。

 私は思わず吐息を漏らす。

 オデロ殿下と会うのでなければこの美しい聖堂の美しさを存分に味わえただろうが、今はそんな気分ではなかった。


 聖堂の一段上がった壇上にリンネさんと辺境伯。そして正装をしたカイヤート様が前に並ぶ。

 一瞬何時ものカイヤートとずいぶん違う雰囲気にハッと見惚れる。

 彼ってこんなに精悍な顔立ちだった?

 脳内が狼狽えてしまうが何もなかったように彼らに続いて壇上に上がる。

 そして私は後ろに隠されるように並んだ。隣にはライノスさんとクラオンさん。

 

 扉がゆっくりと開いた。

 マントを羽織り煌びやかな王族の正装姿で現れたオデロ殿下と副神官のアブレイ様と騎士隊長のルドルフ・シーデン様と数人の騎士達。

 よく見るとマリーズの婚約者のラバン・キアード様もいる。

 背筋をピンと伸ばし見事な所作でオデロ殿下が入って来る。

 相変わらず美しい顔。金色の美しい髪が肩から零れ落ちる様はいつものように決まっている。

 私は後ろなのでド真ん中から見る事は出来なかったがぞんざいな態度の中にも彼は疲れているように見えた。

 まあ、色々な事があったはずだから。

 私は大きくため息をはく。

 

 「私はシェルビ国、第二王子オデロ・シェルビと申します。この度は急な訪問にもかかわらずこのような場を設けて頂いた事感謝申し上げます」

 オデロ殿下はゆっくりと礼をして頭を上げた。後ろの続く人たちも同じような動作をする。

 彼は頭を上げた時私をじっと見すえた。

 私も視線を反らさずじっと見返してやった。

 あなたなんかこわくないからって!

 それにしてもあいつよくものこのこと来れたもんだわ!神経ふとっ!

 脳内でたらたらと文句を言いまくる。

 リンネさんが返事を返す。

 「シェルビ国王太子。オデロ殿下ようこそお越しくださいました。私は前皇王の妹になりますが今はこのスヴェーレの教会で司教をしております。隣に降りますのは第二皇子のカイヤート・プロシスタンです。シェルビ国の王子との謁見と聞きこの席に同席いたします」

 「カイヤート・プロシスタンです。どうぞお見知りおきをオデロ殿下」

 カイヤートが挨拶をするとオデロ殿下がすっと目を細めた。

 壇上にいる皇族よりはるかに自分の方が勝っているとばかりの侮蔑の目のようだ。

 失礼な奴と思ったが、実際私もこの国の事は何も知らなかった。

 噂だけを鵜呑みに信じて獣人なんかとばかにしていたのだから無理もないのかもしれないけど。

 それにしてもオデロ殿下は王族なんだから、あからさまな態度はどうなのよ。

 私は内心で彼に突っ込む。

 カイヤートがどんな顔をしているかまではわからない。でも、何となく想像はつくが。


 リンネさんはそんなオデロ殿下の態度など気にもせず言葉を繋いだ。

 「それにしてもオデロ殿下。ご連絡を受けてすぐの来訪とは一体どのようなご用件でしょう?」

 「はい、その件に関しましては本当に申し訳ないとしか。ですが私はセリーヌの事をずっと心配していたのです。こちらに身を寄せていると聞きすぐにでも会いたくてたまらず無礼をはわかっていましたが‥」

 待ってましたとばかりにオデロ殿下がつらつらと話をする。


 ああ~不毛な会話だな。

 何が心配してた?会いたかった?こっちは二度と会いたくなかったわ。


 その後も彼はそれはもう見事なほど饒舌にシェルビ国の始まりからかいつまんでここまでの状況を話した。

 「~~~~まあ、このような状況でリンネ様の後ろにいるセリーナ・スコット辺境伯令嬢は我が国の至宝ともいうべき。いえ、我が愛しの<真実の愛>のまごうことなき相手なのでございます。私が国王の急病で忙しくしている間にどうやら彼女とは意見の相違があり知らない間にこちらの国にまでご迷惑をおかけしていたらしく。私はそのような事は知る由もなかったのです。どうか我が至宝を急ぎお返し頂きたくお願い申し上げます」


 ああ~良くここまでそんなうまい話が盛れたもんだなと感心した。










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