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【神託】で選ばれた真実の愛の相手がくそなんですけど  作者: はるくうきなこ


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34聖女誕生


 あの後私は自室に引きこもった。

 また何を言われるか分からず逃げてるなんて子供たちにも会わす顔がない。

 わかってはいても恐かった。

 イルは私の後を追って一緒に部屋に加護ってくれた。

 『お兄様どうすればいいの。私に聖女何て出来る訳がないのに』

 『どうして?セリなら出来るんじゃないのか?でもなぁ、お前を危険な目には合わせたくないからな』

 『でしょ?私はここが気に入ったわ。ここで子供たちに勉強を教えたり料理をしたり、そうだ今度は野菜とか作ってみたい。お兄様だって一緒だし、もう言う事ないわ』

 『ああ、お前は辛い目に遭ったんだ。好きにしたらいい』

 『そう言えば聞こうと思ってたんだけど病気はもう大丈夫なの?』

 『セリそれ聞く?俺は死んだんだ。病気なんか関係ないだろ。ったく。でも、俺の心配してくれたんだな。そう言うところ大好きだ』

 『うふっ、良かった。お兄様だいすき~』

 私をイルを抱き上げる。

 イルがペロペロ私の顔をなめてくれて沈んだ気持ちを引き上げてくれる。

 ごろごろ喉を鳴らして温かな体温に触れると私はそのまま眠ったらしい。


 ぐっすり眠れて私は翌朝は元気に早起きをした。

 教会の庭に出るともう使用人の人たちが働いていた。

 一緒に畑から野菜を収穫して朝食作りを手伝った。畑にはサツマイモに似た芋がたくさんあった。

 料理はとにかく美味しい。でも日本人ならば食べたいものがある。

 前世の記憶を思い出して無性に食べたいものが三つあった。

 おにぎり。味噌汁。だし巻き卵。どれもこの世界にはない。米があればなぁ。麦はあるけど発酵が出来るか。だし巻きはカツオだしがなぁ‥

 その日、私は驚く事になった。

 調理場で発酵ずけの魚を見つけたのだ。聞けばトドンという植物の根には発酵を促す作用があるらしい。

 料理人はそれを魚入れて日持ちを良くするらしい。

 これって粕漬みたいな?うそ。

 私は早速麦を煮てトドンと塩を混ぜ込む。

 だしと言えば鰹節。そう言えばカツオでなくてもサバとかニシンとかでも出来たはず。ようは魚とゆでてゆっくり燻せばいいなら作れるかも。

 こんなことを考えれるのもここに来たからだ。

 そんな事を考えながら作ったのは結局フレンチトーストと干し肉と端切れの野菜を使ったスープだったけど。


 子供たちは基本食事は別の取る。昼食は私の勝手で一緒に取る事にしている。

 だから朝はゆっくり食事が出来る。

 リンネさんやラゴンさんたちが食堂に現れた。一緒にカイヤートとライノスさんとクラオンさんも来た。

 なんて挨拶すればいい?まあ、変に無視するのも大人げない。

 カイヤートも何だか気まずそうだ。

 「皆さんおはようございます」

 「セリおはよう。ずいぶん早いのね」リンネさん。

 「リンネさん、昨日はごめんなさい」

 「いいのよ。セリの気持ちが一番だもの」

 「でも‥」

 「気にするな。大叔母がいいって言ってんだ。なっ、おはようセリ。それよりずいぶん張り切ったんだな。うまそう~」

 カイヤート怒ってないの?何だか相変わらず調子いい。

 私は少し拍子抜けするが、まあ良かった。

 「おはようございますセリ様」これはクラオンさん。いつも真面目で見た目がいいのでキラキラオーラがすごい。

 「おはよう。朝からうまそうだな」大きな体のライノスさんには足りないかも。

 「はい、昨夜早く寝てしまって今朝は早くに目が覚めたのでつい張り切ちゃって‥さあ、良かったらどうぞ」

 私は愛想よくみんなに皿を配る。もちろん料理人が作ったパンやオムレツやサラダも一緒に並ぶ。

 「いただきま~す!」

 みんなフレンチトーストを頬張るように食べてくれた。美味しいって喜んでくれて良かった。


 すると朝早くから客が見えた。

 どうやらスヴェーレの街の領主様の執事の人らしい。要するに辺境伯という事だろう。

 「リンネ様お話が」

 リンネさんはその男性と客間に入って行った。

 私はいつものように子供たちと一緒に過ごす。

 「しゃんしぇぇ~、えほんよんで~」アーポは朝から元気だ。

 「ずるいアーポばっかり、僕も」ポンツが口をとがらせる。

 「私は先生に髪を結んでほしかったのに」

 「コニハ、ここにいらっしゃい」

 私は彼女の髪をきれいに梳いて三つ編みにしていく。赤色のリボンを結ぶとコニハは大喜びした。

 そして絵本を読み始めた。


 するとシスターマリーから客間に来るように呼ばれた。

 「先生は少しお話があるからペッカーみんなをお願いね。そうだ。朝フレンチトーストをたくさん作ったから後で食べましょうね」

 「ふれぇんちぇとーしゅと?」

 「ええ、ミルクとお砂糖たっぷりですごく甘いの」

 「たのしみ~僕一杯食べるから」ポンツは相変わらず欲張りだ。

 「ポンツばっかりずるい!」コニハ。

 「お前ら喧嘩するならなしだからな」ペッカーさすがだわ。

 「やだ~」

 「みんな仲良くしててよ」

 私はクスクス笑いながら部屋を後にして客間に行った。もちろんシスターマリーが面倒を見てくれる。


 客間に入るとスヴェーレ領の執事さんとリンネさんが難しい顔をしていた。

 「お話があると聞きましたが‥」

 私はおずおずと尋ねた。

 「ええ、大変なの。シェルビ国のオデロ殿下からあなたを連れ帰るからこちらに来ると連絡があったの」

 「どうして彼が?あの人とはもう何の関係もないはずです。私はシェルビ国には帰りません。どうかここにおいて下さい。リンネさんお願いします」

 私はとっさにそうお願いしていた。

 「もちろん、セリが嫌だと言うなら‥でも、相手は王族こちらにもどうしても引き留める理由が必要になるかもしれないわ」

 「そんな、私はごく普通の人間で引き留められる理由はないわ。ああ、どうすれば」

 きっとオデロ殿下は私をまた婚約者に戻す気よ。私がいなければ<真実の愛>で魔粒毒の浄化が出来ないとか言うつもりなんだわ。

 そんな事知るわけがないじゃない。裏切ったのはあなたよ。それにユーゴ殿下は命まで落としてお兄様だって‥許さるはずがないじゃない!


 「セリ、私達の国ではもうすぐ月喰いの呪いが始まるわ。それを最小限に防ぐにはどうしても聖女が必要だって言ったでしょう?あなたが聖女になってくれればプロシスタン国はあなたを全力で守る。どうかしら、こんなやり方でお願いするのは卑怯だと思う。でも‥」

 私は自分の都合ばかり言っている事はわかっている。

 シェルビ国に無理やり連れていかれるか、この国で聖女として役に立つか。

 もう答えは出ている。

 「わかりました。聖女を引き受けます。そのかわりあまり期待しないで下さい。皆さんの期待に応えられるか自信はありませんから」

 「ええ、歴代の聖女も万能ではなかった事ははっきりしてるわ。心配しなくていいわ。あなたに余計な負担を掛けないと約束する」

 「はい、よろしくお願いします」

 こうして私はプロシスタン国の聖女となった。











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