26一緒にパンケーキを
そこに男の人がふたりが入って来た。
「殿下いい加減にして下さいよ!」
そう言ったのはどうやら虎獣人らしい人。尻尾が縞々の虎柄で目はダークブラウン。
虎獣人らしくがたいはかなり良く髪はオレンジ色だ。顔はワイルド系かな?でも顔は毛むくじゃらではない。寧ろ人間と同じで前世で言えばゴリラ?いやオランウータンか?
「そうですよ。私達を置いて行くなんてどうかしてます」
こちらはカイヤートと同じ耳と尻尾できっと狼獣人?毛色は茶色い。目は琥珀かな。でもカイヤート見たいに瞳孔は赤くない。
すらりとスマートでこちらは超美形って感じでかっこいい。
って言うか何してんだろう?男はこりごりだって言うのに。
はっと今の状況に気づく。
「あの、下ろしてください!」
私はなぜか彼に抱かれたままで慌てる。
「あっ、すまんすまん」
カイヤートが私をそっと下ろす。
意外と素直な態度だ。
虎獣人の男が走り寄って来た。
「殿下、一体何を?いきなり女性を襲ったんですか?」
今にもつかみかかりそうな勢いだ。
「ばかっ、ライノスそんなことするわけないだろ!ったくお前は!」
こうやって見るとカイヤートって身長あるんだ。まあ、私よりかなり高いし。
変に感心してしまう。
「殿下、こちらの女性に我らをご紹介頂けませんか?」
「お前まで‥こちらはセリ。シェルビ国から来ていて子供たちの世話をしているそうだ。セリ、こいつらは俺の側近でこっちがライノス。騎士隊長の息子。でっ、こっちがクラオン。父は宰相をしている」
「セリさんですか。お、俺はライノスって言います。殿下が失礼なことをしたらいつでも行って下さい。俺らは殿下のお目付け役も仰せつかっていますんで」
大柄な虎獣人のライノスさんが照れ臭そうに挨拶をしてくれた。
身体は大きいがくっりとした目が可愛い。
「セリ様、先ほどは失礼しました。私は狼獣人のクラオンと申します。殿下のお供で国中を旅しています。何かありましたらいつでもお声がけください」
クラオンさんはものすごく神経質で几帳面そう。
カイヤートみたいなのが主人だと大変だな。
オデロ殿下の事を思い出しお気の毒にと手を合わせる。
「はい、ありがとうございます。ところで皆さん、お腹空いてます?」
ついお疲れモードのふたりに同情してそんな事を口走った。
「ああ、もうペコペコで何か食べ物をって思ってたんだ。そしたらセリがうまそうなものを持って現れた。それ食っていいか?」
私はさっきパンケーキをテーブルに置いたところだった。
「だめでしゅ!これはセリしぇんしぇいの!」
アーポが私の前に出て守ろうとしてくれる。
「何だお前?俺に逆らうのか?」
はっ?こんな小さな子供に何?その口の利き方。上等じゃない。この男には躾が必要ね。
「あなた本当にこの国の皇族なの?こんな小さな子供を脅かすようなことを言って、一体どういうつもり?アーポはそれはいい子なの。何と言ったってレディを守ろうとしたのよ!」
「何だよ。俺だって守ってやっただろう?」
「いつ?」
カイヤートの顔が真顔になる。
途端にさっき抱かれたことを思い出して顔が真っ赤に。
「殿下!」
もう、ライノスさんグッド!
「もう言い合いは止めませんか?」さすがクラオンさん。
「それ、お前が言うのか?」カイヤートは側近をジト目で見る。
私はたまらなくなって「もう、殿下が礼儀知らずだからじゃないですか!」
「なんでだよ!」
知らん顔をしてばっさり切り捨てる。
「さあ、子供たちはお腹が減ってるんで‥みんなこっちに座ろうね。皆さんは適当なところにどうぞ」
「いいのか?」
カイヤートが驚いた顔で。
あんな失礼なことを言っておいていいのか?
ふん、私だって鬼じゃありませんからね。
これ以上は言うまい。子供が怯える。
私は令嬢の時を思い出し顔面に笑顔を張り付ける。
「はい、どうぞ。今パンケーキをお持ちしますので」
私は子供たちのカラトリーを準備するとキッチンに戻って余分に焼いたパンケーキを持って来る。
「みんな、お兄さんたちにも分けてあげようね。すっごく上手に出来たからお兄さんたちすごく喜んでくれるよ~」
有無を言わさない私の声掛けに子供達も空気を読んだらしい。
ゴクンとつばを飲み込む音とともに「は~い」とアーポ。
うんうん、待ちきれないよね。
カイヤート達も黙って座っている。
いや、何も言わせないから。
私は視線で彼らを射殺し子供たちに柔らかな眼差しを向ける。
「セリしぇんしぇ。食べていい~?」
「ええ、みんな手を合わせて、いただきま~す」
「「「「いっただっきまーす。しゅっ!」」」」
子供たちが食べ始めたところでカイヤート達にするりと目を移す。
「さあ、皆さんもどうぞお召し上がりください」
「ああ、悪いな。いきなりで。じゃあ」
カイヤートががさつにカラトリーに手を伸ばす。
チッ!
「あの、子供たちの前ですのできちんといただきますをお願いします」
「セリ様申し訳ございません。殿下!」
クラオンがばっしと殿下の手をはたく。
「いただきます。これでいいのか?」
「はい、どうぞお召し上がりください~」
私は大げさな返事を返した。
ああ、うざっ!
カイヤートってなんだかオデロ殿下みたいな感じでいやだな。
って言う私も脳内呼び捨てなんだけど。
まあ、今の私はシェルビ国の貴族でもないんだし‥でも、そうなれば私って不敬になるって事?
これはまずい。
少しは態度を改めるべき?
そんな事を思いながらもふっと美味しそうに食べる子供たちに笑みがこぼれる。
「うまっ、何だこのパンケーキ?これほんとにセリが作ったのか?まじ、うまい!」
礼儀も何もない無礼極まりない皇子からそんなお褒めの言葉を頂きが何と返せば?
「はい、お口にあってよかったです‥ほほほほ」
その口を閉じてくれと念じながら私はパンケーキを口に運んだ。
うまっ!なにこれ?やばいやばい。これまじうまい。
脳内で同じことを想っている自分に呆れていた。
イルがいつの間にか現れて『セリ、大丈夫か?』
『ええ、こいつまじオデロみたいなの。でも、心配ないわ。私強くなったから』
『ああ、だろうな』
『ちょっと、それどういう意味?』
『な、何でも。それよりうまそうだ』
「イルも欲しいの?はい」
私は端っこをイルにやる。
イルは美味しそうにパンケーキを食べた。
「にゃにゃ~ん(これ、ばかうまっ!)」
「いりゅもおいちいって」
ああ、アーポめちゃ可愛い。




